ホーム<経済協力<パラオで活躍するJICAボランティア<熊谷かおる(薬剤師/ ベラウ国立病院)

パラオで活躍するJICAボランティア

◆パラオからAlii!(こんにちは)

JICA ボランティア 熊谷 かおる

 ベラウ国立病院で病院薬剤師として活動中のシニアボランティア、熊谷 かおるです。パラオに来る前は南の島とは縁もなく、海と言えば自宅のある茨城の夏でも冷たい海での海水浴、TVでの海洋映像を見ることしかなかった私ですが、豊かな自然に囲まれたパラオでの生活を体験すると海が見えない日常はさぞかし寂しいだろうなと思うようになりました。

ベラウ国立病院はパラオ唯一の国立病院で、充分でない物資、設備、人材のもとパラオ国民の健康をいかに守っていくかが大命題となっています。日本では病院薬剤師、調剤薬局薬剤師として25年あまりの経験がある私ですが、薬物治療における医薬品の種類が限られ、在庫薬品が寄付と輸入で賄われる現実は想像以上に厳しいと感じています。

(ベラウ国立病院薬剤部)

日本で扱う処方薬は次から次へと開発される高価な新薬で、慢性疾患などでは処方される薬の種類も多く、活動はじめの時期はパラオで発行される大変シンプルな処方に驚き、これらの薬でどこまでの治療ができるのか?と思いました。しかし、活動も終盤となった現在ではやはり長く生き残っている有益な薬の価値を感じずにはいられません。今回、私がJICAボランティアに志望した理由は日本以外の世界での医薬品の使用を体験し、今までの薬剤師としての経験が国際貢献に役立てればと思っていたので大変貴重な経験となっています。

パラオと日本では薬剤師の仕事内容もかなり相違があり、処方箋に沿っての薬の調剤はパラオではアメリカ式でテクニシャンが行い、薬剤師はその最終責任者となっています。薬剤師はマネージメント業が主となり国立病院の薬剤部は国全体の薬事行政の中心となっています。(注:日本の場合は調剤実務を薬剤師がやらなくてはいけない(テクニシャンの制度がない)ので、薬剤部長、薬局長がマネージメント業をやり勤務薬剤師は調剤実務をしています。特に調剤薬局などではデスクワークができるのは調剤終了後となります。)

国立病院の入院、外来患者様の調剤をはじめとして島内、離島の診療所、保健施設への医薬品、ワクチンなどの供給や空港での違法な医薬品の持ち込み管理、などもあります。

また調剤方法も大きく異なり、日本のように1回毎の服用薬を一包にまとめたり粉薬を計量して1回量をパックするかわりに、1か月分を1種類ごと1ボトルに数量を数えて充填、粉薬の変わりに水剤で渡す方法となっています。またこちらではリフィル処方と言って1枚の処方箋が同処方内容で3~6回繰り返し使用できるようになっています。

病院での活動ではテクニシャンとともに処方箋調剤をしたり、月1回の割合でテクニシャン向けの服薬指導のための疾患別講義、医薬品適正使用のための啓蒙ポスター作成、調剤室の業務環境調査、調剤業務効率化のための予製剤の製品検査などを担当しています。

(講義の様子       作成したポスター       調査の様子)

(ズンバ教室)

病院以外のパラオでの生活ですが、毎週3回夜に、これは保健省の健康プログラムに属するものですがZUMBA というダンスエクスサイズに参加しています。活動終了後のクラブ活動のようなものですがフィリピン人の先生が講師となり激しく、楽しくダンスで運動をしています。この教室にはパラオ人、フィリピン人、台湾人、もちろん日本人の方々も、多国籍で参加しています。国立病院に勤務している日本人歯科医の先生も指導補佐として最前列で踊っています。

また、毎週末にはパラオ国立博物館のイタボリの先生にパラオ在住の日本人の方々とともにパラオ伝統のITABORIを習っています。暑い中、汗をかきつつ無心にパラオの伝説をボードに掘り込んでいく作業は時のたつのも忘れてしまうほどです。

(イタボリ教室)

パラオは大変小さい国ですが、世界様々な人々が来ては色々な文化の影響を受けつつ発展してきていると思います。そのようななかパラオ独自の文化も感じながら活動が続けられればと思います。