パラオ情勢(2015年3月)
※この月報は、パラオ国内の新聞やテレビ報道をもとに、在パラオ日本国大使館が作成しています。
◆政治
- パラオ内政
- 大統領法律顧問の死去
- パラオ外政
- ペリリューにおける未開壕
- 両陛下御訪問に関する両院合同決議
- 旧日本軍沈没船に中国国旗
- 中国人の起訴
- 在パラオ米国大使の着任
- ラトビアとの外交関係樹立
15日,大統領法律顧問の1人であるデヴィッド・シッパー氏(米国人)が心臓発作により死去した。同氏は,レメンゲサウ大統領の第2期目の政権時も同大統領の法律顧問として働いており,その後米国に帰国していたが,現レメンゲサウ大統領政権発足を機に,再び大統領法律顧問として働くためパラオに戻ってきていた。23日には,大統領府主催にてメモリアルサービスが開かれた。
25日から29日にかけて,厚生労働省派遣団がパラオを来訪し,ペリリュー島においてペリリュー州政府の協力のもと,イワマツ壕を開壕し,壕内にて遺骨収集調査を行った。イワマツ壕は,2004年に外国のテレビクルーによって1度開かれたが,安全上の理由により閉壕されていたもので,中には日本人兵の遺骨が残っている可能性が高いとされていた。今回の遺骨収集では,6柱の遺骨が発見された。
18日,天皇皇后両陛下のパラオ御訪問に関する上院発両院合同決議が採択された。決議文においては,パラオ国民の今次御訪問に対する喜び,誇り,感謝の念が示されており,日・パラオ関係の更なる友好関係をより高めることになるであろうとしている。
21日,コロール島沖約8キロ,水深約40メートルに位置する旧日本軍沈没船に中国国旗が取り付けられていることが,共同通信記者により見つかった。その後,国旗は取り除かれ,大統領からは,パラオの歴史・自然遺産に対する不敬行為であるとし,遺憾の意が表明された。
6日,パラオ公文書詐称のため中国人1名が起訴された。コロール在住の被告人は,パラオ人との子供として娘の出生証明及び旅券発行を申請していたが,父親として記載されていたパラオ人男性が本当の父親ではなく,同人に金銭を供与することによって不正に記載していたことが発覚し,今回の起訴につながった。
10日,首都にて新米国大使であるエイミー・ハイアット氏の信任状奉呈が行われた。同氏は,パラオ駐在の大使としては2代目であり,前任のリードロウ氏が離任してから1年9ヶ月ぶりに米国大使がパラオに着任することとなった。
20日,ニューヨークにて,パラオとラトビアの国連大使が外交関係樹立のコミュニケに署名を行った。パラオにとっては,67番目の外交関係樹立相手国となった。
◆経済
- 上下水道料金値上げ
- 中国系ホテルで下水流出事故
- ADB,GDP成長率8%を予測
- チャーター便4月半減へ
- マーシャル大統領がパラオ国家海洋保護区を支持
- サメ捕獲の台湾漁船に10万ドルの罰金
- 3月までの訪問客数
- 上水道設備改善計画協力準備調査終了
- 米国,国勢調査等へ資金協力79万ドル
2日,パラオ公共事業公社(PPUC)は,4月1日付で上下水道料金を値上げした。一般家庭用上水の場合,使用量5000ガロン以下で25%増,10000ガロン以下なら82%増等,使用量に応じて値上げ率も高くなっている。また,事業用・政府用上水は一律100%の値上げ,下水は家庭・事業用ともに50%の値上げとなる。現在,パラオの家庭用上水料金は5000ガロンまでは一律7.35ドル,事業用上水料金は10000ガロンまでは一律41.20ドル,家庭用下水料金は一律2.50ドルとなっており,値上げ後はそれぞれ9.17ドル,86.32ドル,3.75ドルとなる。
11日,中国資本のパラオ・バケーション・ホテルの下水管が詰まり,一時海に下水が流出する事故が発生した。コロール州政府や環境保護委員会(EQPB)が現場に駆けつけ,ホテル側が所有するバキューム・カーによるくみ取りや,砂で漏出を防ぐ等の措置をとり,大規模な流出は防いだものの,環境保護委員会は1万ドル以下の罰金を科すとしている。同ホテルは下水送水網への接続も,近隣の公園への下水タンク建設も許可を取得できておらず,敷地内のタンクから1日10回以上下水をくみ取り,処理場へ運搬している。
26日,アジア開発銀行(ADB)は,報告書「2015年アジア開発展望」の中で,パラオの2015年度GDP成長率を8%とする予測を発表した。観光客増加による観光業の発展やホテル建設の増加等を高成長予測の理由としつつ,環境への影響や地元経済への利益循環には懸念を示している。
2月25日,オビアン公共基盤・産業・商業大臣は,中国からパラオへのチャーター便を運航している4社(香港便3社,マカオ便1社)に対し,4月15日以降,現在の半分に減便させることを発表した。チャーター減便は,旅行会社を代表する商工会議所や観光局等から支持が表明されているが,ネマエス下院議員,バシリウス下院議員,バウレス上院議員,トリビオン上院議員は,同決定は差別意識に基づいており,パラオの観光業衰退を招くものとして批判している他,ナカムラ元大統領,シード元上院議員ら有力実業家らも反対を表明している。一方,10日には少数派上院議員5名が,チャーター便規制を強化するための法案を提出した。
マーシャル諸島のロヤック大統領は,12日付レメンゲサウ大統領宛書簡にて,現在パラオ国会で審議中の国家海洋保護区法案への賞賛の意を表明した。ロヤック大統領は同書簡の中で,ミクロネシア・チャレンジ,サメ保護区,マジュロ宣言等,パラオとマーシャルは環境関連のイニシアティブにおいて常に協働してきたと強調し,パラオをこの分野のリーダーと位置づけているとしている。
1月26日に海上保安当局が拿捕した台湾船籍の漁船は,違法なサメ漁業の罪に問われ罰金10万ドルを支払った。同船はPEW財団の支援による海上監視デモンストレーションの際に発見され,拿捕に至った。同船からは,304体のサメと数百のフカヒレが発見されていた。同船は既にパラオ海域を出ている。
2014年年初から3月までのパラオ訪問客の総数は48,673人であり,昨年同期比に比べ46.61%増加した。内,日本人は9,364人(前年同期比24.62%減),台湾人は4,425人(同38.65%減)、韓国人は3,304人(同15.53%減)と,大幅に減少するなか,中国本土(含香港)からの訪問客は26,206人(同485.87%増)と激増しており,他国を引き離し第1位となっている。
2月27日,JICA調査団は,昨年より実施中の上水道設備改善計画協力準備調査で作成された概略設計案(DOD)について,オビアン公共基盤・産業・商業大臣及びマサン・パラオ公共事業公社(PPUC)理事長ら関係者に説明し,議事録に署名した。同計画では,老朽化した送配水管の取替え等が提案されており,今後無償資金協力として採択された場合,工期は2年半程度が見込まれている。
米内務省は,2015年技術協力事業の一環として,パラオ政府に対し、2015年国勢調査の実施,観光10か年マスタープランの作成,パラオ金融機関委員会に対する米国連邦預金保険の審査に関する訓練の実施にかかる費用として,79万2千ドルを供与した。
◆その他
- アメリカンエクスプレスの利用停止
パラオ国内において,アメリカンエクスプレス・クレジットカードでの支払い取り扱いを停止する店が続出している件に関し,同社が,パラオを依然として米国の一部であると整理していることが原因と判明した。米国内の税法改定により,納税者番号を持たない事業主体にはクレジットカード会社が支払いの30パーセントを源泉徴収税として請求できることになったが,アメリカエクスプレス社では,独立国家であるにも関わらずパラオが未だ米国の一部と登録されているため,納税者番号のないパラオ国内事業主体にも右税金が課され始めた結果,現在,ほとんどの店においてアメリカンエクスプレスの利用が停止されている。
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