パラオ情勢(2015年10月)
※この月報は、パラオ国内の新聞やテレビ報道をもとに、在パラオ日本国大使館が作成しています。
◆政治
- パラオ内政
- 第21回パラオ独立記念日式典の開催
- リー臨時特別検察官が辞任
- パラオ政府とフィリピンのサルベージ会社が中国クルーズ船の撤去に同意
- メトゥール上院議員が副大統領選への出馬を表明
- 27年ぶりの銃による殺人事件が発生
- ケソレイ上院副議長が逝去
- マラカルで発生した強盗により,バングラデシュ人店員が被害
- 国連の日記念式典の開催
- アグオン司法省公安局長が復職
- パラオ外政
- ベルズ副大統領が第2回海洋会議に出席
- 在パラオ台湾大使館が双十節祝賀レセプションを開催
- テレイ・パラオ短期大学長がチェコ外務省メダルを受賞
- 在グアム・パラオ人コミュニティがパラオ独立記念日祝賀会を開催
- 両院がクラスター弾に関する条約批准のための共同決議を採択
- パラオが米による対キューバ禁輸措置の解除を求める総会決議に賛成票
1日,首都マルキョクにて第21回独立記念日式典が開催された。同式典には,レメンゲサウ大統領をはじめとするパラオ政府要人や,外交団が出席した。なお,この機会に,オランダ,ロシア,南アフリカ,タイのパラオ兼轄・駐フィリピン大使が信任状奉呈を行った。
4日,ブラッドリー司法長官は,リー臨時特別検察官の辞任を発表した。同氏は,昨年11月に任命されたばかりで,突然の辞任の理由は明らかにされていない。昨年10月,レメンゲサウ大統領は,同氏を特別検察官に指名したが,上院の承認を得られなかったため,同年4月に成立した臨時特別検察官法により,司法長官の指名によって同氏の就任が決定した。同氏は,これまでにマリウール前副大統領及びアルラン・ニワ-ル州選出下院議員の起訴に関わっている。同氏の辞任を受け,後任が指名されるまでの間,シムス臨時特別検察官補佐が,代理を務めることとなる。
パラオ政府とフィリピンのサルベージ会社は,昨年11月からパラオ領海内に放置されたままとなっている中国クルーズ船を撤去する契約を結んだ。同会社は,20万ドルをパラオ政府に対して支払った上で,同クルーズ船をフィリピンに持ち帰り,解体して売却するか,または修理して再利用する予定。
8日,メトゥール上院議員は,自身の誕生日会の席上にて,2016年に予定されている次期副大統領選への出馬を表明した。同議員は,4期16年にわたり上院議員として在籍しており,第8回議会においては上院議長を務めている。次期副大統領選には,すでにアダチ・現コロール州知事及びオイロー上院議員が正式に出馬を表明しているほか,ベルズ現副大統領の出馬も予想されている。
11日,コロール州マダライ地区にて,一般男性が,男女問題による争いを原因として,知人である3人兄弟によって銃殺される事件が発生した。パラオにおいては,27年ぶりの銃による殺人となった。
13日,フィリピン・マニラの病院にて,慢性疾患のため,ケソレイ上院副議長が逝去した(享年73歳)。同議員は,2008年に初当選し,第8回前国会と今国会の2期にわたって上院議員を務めた。トリビオン前政権時代には,当時の大統領支持派であったため,現レメンゲサウ政権の下では,大統領反対派に属していた。
21日,マラカルの小売店に強盗が侵入し,バングラデシュ人店員2人がハンマーで襲われる事件が発生した。被害者のうち,1人は重傷が原因となって後に死亡している。パラオでは,過去にもバングラデシュ人を狙った犯罪が発生している。
23日,国連の日を記念する式典がマルキョク州で開催された。同式典には,レメンゲサウ大統領をはじめとする政府要人や外交団が出席した。関連イベントの一環として,パラオに在住する各国コミュニティが参加する国連の日パレードが開催され,在パラオ日本国大使館員,日本語補習校生徒,JICAボランティアが中心となって,在留邦人コミュニティ代表としてパレードに参加した。
アグオン司法省公安局長は,ベルズ副大統領兼司法大臣の処分通告によって,先月23日から10日間の停職処分,及び公職法規違反に関する調査が終了するまで公務休職となっていたが,今月27日,復職が決定した。同決定は,同月19日に,シムス臨時特別検察官代理が,調査の結果,同局長に公職法規の違反はなかったとしたことによる。ベルズ副大統領は,この決定を不服としており,29日,同臨時特別検察官代理宛の書簡にて,本件調査の続行を要求している。
他方で,30日,シムス臨時特別検察官代理は,職権濫用の疑いでベルズ副大統領を刑事告訴した。これは,アグオン公安局長処分の発端となった公的資金の非政府銀行口座入金をめぐり,同副大統領が裁判所の命令なく口座情報を開示し口座を凍結するよう銀行に求めたためで,同局長の復職後も事態の収拾がつかなくなっている。
ベルズ副大統領は,5日から6日にかけてチリのバルパライソで開催された第2回海洋会議に出席した。同会議は,ケリー米国務長官のイニシアティブによって,海洋保護及び保全の強化を目的として,昨年から開催されている。ベルズ副大統領は,会議の場において,違法漁業に対する取組強化の一環として,パラオ議会に対し,パラオ国家海洋保護区設置法案の可決,及び国連食糧農業機関(FAO)の寄港国措置に関する協定(PSMA)への加入を強く訴えた。
14日,在パラオ台湾大使館は,シー・パッションホテルにて双十節祝賀レセプションを開催した。同レセプションには,パラオ政府の代表としてテメニル社会・文化大臣が出席したほか,チン上院議長,アナスタシオ下院議長等の要人が出席した。
1日,テレイ・パラオ短期大学長は,パラオを兼轄する駐フィリピン・チェコ大使より,チェコ外務省メダルを授与された。同メダルは,チェコとの二国間関係の発展に寄与した個人に与えられるもので,同学長は,2009年に当時の駐フィリピン・チェコ大使によって発案されたEU映画祭のパラオ開催への協力を評価され,今回受賞が決定した。同映画祭は,毎年パラオ短期大学で開催されており,今年で7年目となっている。
10日,在グアム・パラオ人コミュニティは,パラオ独立記念日祝賀会を開催した。カヤンゲル州政府が,公費及び寄付金の計10万ドルを使用して,ユナイテッド航空の飛行機をチャーターし,自州のみならず他州からも本行事参加を募ったため,州知事をはじめとする州政府関係者,伝統酋長,ダンサー,一般市民を含む100人以上がグアムへ渡航し,パラオからの参加者は過去最大となった。なお,この機会に,グアム在住のパラオ有権者と交流するため,大統領支持派の上院議員6名もグアムへ渡航している。
15日,クラスター弾に関する条約批准のための両院共同決議が採択された。パラオは,2008年12月に,同条約に署名している。
27日,パラオは,米国による対キューバ禁輸措置の解除を求める総会決議案に,初めて賛成票を投じた。過去,パラオは同様の決議に対して,米国との関係から,反対または棄権してきたが,先月キューバと外交関係を樹立したことから,賛成に回ることとなった。同決議案は,賛成191,反対2(米国,イスラエル)で採択された。
◆経済
- ホームステイ・プログラム
- パラオ国際船舶登記所の収益増加
- PPUCの電気料金値上げキャンセル
- 下院が再びカジノ法案を提出
- 友好橋高架水道管工事の完成
- 住居問題解決タスクフォース
- 9月までの訪問客数
- パラオ国家海洋保護区法が成立
- 中国人投資家によるアイメリークへの投資に感謝
- 海底ケーブル事業参画のための決議
1日,観光庁は,一般家庭が直接観光収入の恩恵を受けることと観光客数の増加に伴う客室不足の解消を目的として,ホームステイ制度の導入を検討し,希望家庭への説明と登録を行う予定としている。家屋そのものや家屋内の部屋の貸し出しも検討される。
9日,パラオ国際船舶登記所によると,8月時点での収益はネットベースで609,714ドルとなった。同登記所の試算では,2021年までに3,816,669ドルの登録料が見込まれている。パラオ政府と登記所の取り決めにより,政府が30%の収益を得ることとされており,本年8月には,329,360ドルが納入された。船籍登録は増加傾向にあり,2015年登録の109艘を含め316艘が2012年以降登録されている。登記所は,米国・カナダと覚書を結び,登録船の監視協力を依頼する予定としている。
12日,パラオ電力・水道公社(PPUC)により,10月1日付で予定されていた電気料金の値上げは,燃料代の充当分として政府が約263,000ドルの補助金を支出することで見送られた。
14日,下院にて,南部に位置するアンガウル州とペリリュー州におけるカジノ設置に関する法案が提出された。16名の下院議員のうち,13名が法案に署名した。法案提出者は,減退するパラオの経済状況に鑑みたカジノの必要性を訴え,2州に設置されたカジノからの収益から全ての州が恩恵を受ける仕組みの構築を目指すとしている。しかし,同様の法案が提出された2010年には国民投票も行われ,その際には75%以上が反対しており,2003年及び2009年時のカジノ法案も,それぞれ当時の大統領に否決されている。
15日,アイライからコロールにつながる水道管の日本・パラオ友好橋高架への設置工事が完了した。高架設置により,従来の海底設置に比べ水道管の点検や補修が容易になる。
15日,レメンゲサウ大統領は,居住地を失った住民の住居問題に関するタスクフォースの設置を指示した。コロールを中心として土地に関する訴訟問題が増加傾向にあり,20世帯が即時退去を求められている。パラオ政府は住宅公社に台湾からの財政支援を受けた住宅ソフトローンの設立を進めており,それにより約100棟の住宅建設を目指している。
2015年年初から9月までのパラオ訪問客の総数は125,467人であり,昨年同期に比べ26.13%増加した。内,日本人は23,060人(前年同期比21.79%減),台湾人は10,652人(同58.33%減),韓国人は8,919人(同19.87%減)と大幅に減少し,9月の日本・台湾・韓国からの各訪問客数は,過去5年間で最低の数字となっている。これに対し,中国本土(含香港)からの訪問客は,69,975人(同256.96%増)と激増を続けており,総数の半分以上を占め,訪問客数第1位となっている。
28日,国際サンゴ礁センターで開催された記念式典において,レメンゲサウ大統領はパラオ国家海洋保護区法案に署名。同法の成立により,今後5年間の移行期間を経て,パラオのEEZ海域内の80%において商業漁業活動が全面禁止されることになる。保護区設置に伴い想定される入漁料などの減収は,環境インパクト費などの徴収により補填される計画となっている。
20日,アイメリーク州政府は特別議会において,中国人投資家による投資への感謝の決議を通過させた。アイメリークへの投資実績はこれまでないものの,中国人投資家のZhong氏は,同州内の官・民の土地へのリゾートホテル建設に関心を示している。同氏の経歴については不明。
27日,上院議員8名が,海底ケーブル事業への参画に向けたアジア開発銀行からのローンを確保すべく,必要な権限を大統領に付与するための決議を提案した。最大250万ドルのローンは,パラオが海底ケーブル事業への参画を確保し,投資や建設を行うための資金に用いられる。ローンの借り入れには約400万ドルのデポジットが必要であり,パラオ国家開発銀行からの短期借り入れが充当される予定となっている。
◆経済協力
- 上水道整備計画が来年早々にも開始
- 台湾による家屋建設のための5万ドル支援
- 水産・農業ローンの提供開始
12日,八千代エンジニアリング社による予備調査報告書の承認を受け,アイライ地区からコロール地区にかけての上水道改善プロジェクトが来年早々より開始される予定となった。予備調査報告と入札は来年1月に日本で行われ,施工会社の決定を踏まえ,来年2月頃からの着工が想定されている。本プロジェクトでは,アイライからコロール間約5マイルの水管の追加新設と,マラカルに25万ガロンの貯水槽と各配水槽へのフローメーターの設置に必要とされる約8.5マイルの劣化水管の交換が行われる。本工事により,全水道料金収入の48%に相当するとされる劣化水管からの漏水を防ぐと共に,一部地域で問題となっている低水圧が解決されることとなる。工事は2017年末の完成を予定しており,工事中は基幹道路での掘り起し作業も行われる。
レメンゲサウ大統領は,パラオ住宅公社を通じた住居建設費として,台湾による5万ドルの財政支援に関する最終合意が近く交わされる旨発表した。近年,コロールを中心に,地主や地主と土地の賃貸契約を結んだ外国人から立ち退きを強要される住人が住居を追われる事案が増加傾向にあるため,その解決を図るもの。
23日,台湾から500万ドルの資金提供を受け、国家開発銀行は小規模農業・養殖事業者向けのローン及び技術支援事業を開始する。ローンは1万ドルから5万ドル程度で返済利率は2%。同事業の推進により,食の安全保障に寄与することが期待されている。
◆その他
- パラオのダンスチームが太平洋諸国舞踊祭に参加
- パラオが「2016年に訪れるべき旅行先」第4位
コロール州ガルミッド地区の女子ダンスチームが,福島県いわき市において3日から4日にかけて開催された,太平洋諸国舞踊祭に参加した。
大手ガイドブックであるロンリー・プラネット編集部が発表した「2016年に訪れるべき旅行先」リストにおいて,パラオが第4位となった。ダイビング及びシュノーケリングのスポットとして高く評価されている。
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