パラオ情勢(2015年9月)
※この月報は、パラオ国内の新聞やテレビ報道をもとに、在パラオ日本国大使館が作成しています。
◆政治
- パラオ内政
- リーダーシップ・パブリックフォーラムの開催
- 行政府機構を再編成する大統領令が発令
- アグオン司法省公安局長が10日間の停職処分
- パラオ外政
- レメンゲサウ大統領による第46回PIF総会及び第27回PIF域外国対話出席
- レメンゲサウ大統領による第70回国連総会出席
- 日本・太平洋島嶼国首脳会合にオットー国連大使が出席
- チン上院議長一行による訪中
- 台湾青年交流使のパラオ訪問
- 小島嶼国(SIS)地域事務局のパラオ設置を当面見送り
- キリバス,ナウル及びツバルがパラオ国家海洋保護区設置を支持
- パラオがパレスチナ旗の国連本部掲揚を承認する決議案に反対投票
- パラオとキューバが外交関係樹立
- パラオと米国が海上取締の共同訓練を実施
- NGOグリーンピース船のパラオ巡回
1日,立法府及び行政府で論争となっている6つの主要政策イニシアティブについて,政府関係者パネリストと一般市民が議論を行う「持続可能な経済開発へ向けたパラオ・イニシアティブを前進させるためのリーダーシップ・パブリックフォーラム」が開催された。政府側参加者として,レメンゲサウ大統領,伝統的酋長,両院議長,関係各省大臣,市民側参加者として,ビジネス関係者や学生等数百名が参加し,活発な議論が行われた。
21日,レメンゲサウ大統領は,業務効率化と行政サービス向上のため,行政府機構を再編成する大統領令第381号を発令した。すでに各省庁内部では,既存部署の統廃合及び新部局の設立のための準備が進められており,翌月1日に発効する。
23日,アグオン司法省公安局長が,公職法規違反のため,10日間の停職処分となった。ベルズ副大臣兼司法大臣による処分通告によると,同局長は,本年7月に,公的資金を非政府銀行口座に入金するよう指示し,所定の手続きに従うことなく同資金を使用したとされている。さらに,同局長は,司法大臣の許可なく,同省内部局の人事異動を行っていた。停職処分期間後も,上記違反に関する調査の結果が明らかになるまで,公務を休職する。
レメンゲサウ大統領は,7日から11日にかけて,第46回太平洋諸島フォーラム(PIF)総会及び第27回PIF域外国対話に出席するため,パプアニューギニアのポートモレスビーを訪問した。
レメンゲサウ大統領は,第70回国連総会に出席するため,22日から28日の日程でニューヨークを訪問し,「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択する国連サミットにて演説を行った。
28日,第70回国連総会の機会に日本・太平洋島嶼国首脳会合が行われ,独立記念日式典準備のため帰国したレメンゲサウ大統領に代わり,オットー国連大使が出席した。
15日,チン上院議長,アキタヤ上院議員,ニルタン・アンガウル州知事及び同州政府関係者が,パラオ投資に関心のある中国のビジネス関係者と面会するため,香港及び深圳を訪問した。訪中前に,チン議長は,滞在中に中国政府関係者と会う機会があれば,在パラオ中国人を支援するため,中国政府によるコンタクト・パーソンの派遣を提案したいと語っている。現在,パラオには,中国本土から派遣された政府関係の駐在者はいないため,先月発生した中国人観光客死亡事故の際には,被害者家族は,在ミクロネシア中国大使館の支援を要請している。
友好親善を目的とする台湾青年交流使19名が,16日から19日にかけてパラオを訪問し,ガラマヨン文化センターにおけるパフォーマンスやパラオ短期大学の学生との交流,ナイトマーケットへの参加等を行った。
7日,PIF総会の機会に,小島嶼国首脳会合が行われ,レメンゲサウ大統領が出席した。同大統領は,インタビューにおいて,小島嶼国戦略の策定を優先すべきとして,小島嶼国地域事務所のパラオ設置を当面見送ると述べている。同事務所のパラオ設置については,本年5月の第7回太平洋・島サミット(PALM7)において,オニール・パプアニューギニア首相が,370万ドルの資金供与を約束していた。
8日及び9日,キリバス,ナウル及びツバル各政府は,レメンゲサウ大統領宛書簡にて,パラオ国家海洋保護区設置への支持を表明した。同保護区設置については,すでにミクロネシア連邦及びマーシャル諸島が支持を表明している。
10日,パラオは,ニューヨーク国連本部にパレスチナ旗の掲揚を認める総会決議案に,反対票を投じた。ほかに反対票を投じたのは,米国,イスラエル,ミクロネシア連邦,マーシャル諸島,ツバル,豪州及びカナダである。同決議案は,賛成119,棄権45,反対8で採択された。
26日,ニューヨーク国連本部において,レメンゲサウ大統領とラウル・カストロ・キューバ国家評議会議長が,外交関係樹立文書に署名を行った。パラオは,キューバに対し,野球における技術協力を要請している。また,現在,パラオ人学生13名が,キューバ政府奨学金の下,同国にて医学を学んでいる。
米海軍とパラオ公安局関係部署が,海上取締の共同訓練を実施した。米側からは,C-130輸送機3機,ヘリコプター,軍艦,コーストガードの船が出動し,パラオ側からは,取締船「レメリーク」と取締官が訓練に参加した。
太平洋地域を巡回中のNGOグリーンピース船「レインボー・ウォリアー3号」が,23日から28日にかけて,パラオに停泊した。24日の記者会見において,同団体は,パラオ政府に対し,違法漁業防止策として,目的港に向かう途中で,他の船舶への積替えを行うトランシップを禁止するよう求めるとともに,パラオ国家海洋保護区への支持を表明している。
◆経済
- アキタヤ上院議員がカヤンゲル州石油試掘申請審査の遅延を批判
- 検察当局が高齢者割引法の不履行を調査
- 2016年度予算が成立
- 海底ケーブル事業関連法案が成立
- 司法当局が違法労働斡旋罪でネパール人を起訴
- 司法省が,労働法規違反の取締実施をパラオ全雇用者に通告
- カヤンゲル州がパラオ国家海洋保護区設置法案の支持を表明
- パラオとナウルが航空サービス協定を締結
- ジャマイカの大手通信業者がパラオ通信公社との事業連携に関心
- メガ・モルディブ航空がADS-B地上局の設置を提案
- パラオ国際船舶登記所がアジアでの営業を拡大
- 8月までの訪問客数
1日,アキタヤ上院議員は,オビアン公共基盤・産業・商業大臣宛書簡にて,カヤンゲル州石油試掘プロジェクトをめぐる同省の対応を批判した。同書簡によれば,本年1月に,パラオ・エネルギー(PE)社とカヤンゲル州が共同で提出した同プロジェクト承認申請は,8月の段階で,いまだ審査状況が不明となっている。なお,環境保護委員会(EQPB)に提出した環境アセスメント及び採掘許可申請については,4月23日に,審査一時停止となっている。同社は,現在考えている対応として,プロジェクトの中止またはパラオ政府提訴の2つの選択肢があると語っている。
8日,リー暫定特別検察官は,メトゥール上院議員宛書簡にて,検察当局は,財務省による高齢者割引法の不履行を調査中であることを明らかにした。同議員は,先月27日に,同法の不履行を書面にて指摘していた。同法は,トリビオン前政権時代の2012年に成立したもので,60歳以上の者に対して高齢者カードを発行し,モノやサービスの購入時に割引とすることを定めている。
21日,2016年度予算が8445万9200ドルで成立した。本予算では,低所得者向けの福祉増進が目玉となっている。新しいイニシアティブとして,社会保障月額手当の50ドル増額,低所得世帯への電気代補助金交付,奨学金資金の40%増加等が組み込まれた。
21日,パラオ議会で政治的駆引きが続いていた海底ケーブル事業関連法案が成立した。最大の争点となっていたのは,本事業のため設立する専門公社(Belau Submarine Cable Corporation: BSCC)と,すでに存在する国営のパラオ通信公社(PNCC)の競合関係である。10日,上院はPNCCに通信事業の独占権を与える条件で海底ケーブル事業関連法案を可決したが,翌11日,BSCC設立を支持する下院は同案を拒絶したため,上下両院は両院協議会を設立し,妥協点を探ることとなった。2回にわたる協議の結果,BSCC設立案で両院代表が合意し,政治抗争は決着した。
22日,司法当局は,違法労働斡旋に従事したとして,ネパール人2人を起訴した。被害者は,複数のネパール人やフィリピン人女性で,高収入の働き口を紹介するとしてパラオに観光ビザで入国後,劣悪な労働条件や偽装結婚の強要等,不当な扱いを受けたと証言している。
23日,司法省労働・人事局は,パラオ全雇用者宛の書面にて,「クリーン・ビジネス作戦」と称した労働法規違反の取締実施を通告した。同取締は,国内の労働環境改善を目的として,通告から30日後に開始され,同局のほか,検察,公安,移民の各関係部局が協力して活動にあたる。
29日,カヤンゲル州議会は,パラオ国家海洋保護区設置法案を支持する決議案を可決した。これで,パラオ16州のうち,同法案への支持を表明する決議を出していないのは,ハトホベイ州のみとなった。カヤンゲル州は,同保護区設置による漁業ライセンスからの収入減を懸念していたが,経済への影響に対して慎重な態度を維持しつつも,支持に回ることとなった。現在,同州は,パラオ・エネルギー(PE)社と共同で,管轄海域における石油試掘プロジェクトを申請中であり,本決議案は,同保護区設置が,同州管轄海域における同様の活動を妨げるものではあってはならないことを強調している。
8日,PIF総会の機会に,レメンゲサウ大統領とワンガ・ナウル大統領は,航空サービス協定に署名を行った。ナウル航空は,北太平洋地域において,すでにマジュロやポンペイ,コスラエで運航している。
ジャマイカに本部を設置する携帯電話事業者Digicelグループのアジア太平洋部門が,パラオ通信公社(PNCC)との事業連携に関心を示している。同社は,中米・カリブ地域及び大洋州地域において事業展開している。
30日,メガ・モルディブ航空CEOは,当地紙アイランド・タイムス宛のメールにて,パラオ国際空港に対し,ADS-B地上局の設置を提案していることを明らかにした。ADS-Bは,航空管制システムに利用されている技術で,人工衛星の信号を利用することにより,地上レーダー利用の場合に比べ,より正確な位置情報の把握が可能となるとされている。
30日,パラオ国際船舶登記所は,アジア地域において,新事務所を3つ開設した。同登記所は,すでにシンガポール,上海,広州及び福州に事務所を設置しているが,今回新たに青島,大連及び台南(台湾)が加わった。同登記所は,中国でのプレゼンス増加によって,パラオ船籍を,アジア地域における主要登録船籍とすることを目指している。
2015年年初から8月までのパラオ訪問客の総数は113,181人であり,昨年同期に比べ29.19%増加した。内,日本人は20,300人(前年同期比22.44%減),台湾人は9.713人(同58.05%減),韓国人は8,151人(同19.39%減)と大幅に減少し,8月の日本・台湾・韓国からの各訪問客数は,過去5年間で最低の数字となっている。これに対し,中国本土(含香港)からの訪問客は,63,228人(同305.44%増)と激増を続けており,総数の半分以上を占め,訪問客数第1位となっている。
◆経済協力
- 「ガラルド小学校スクールバス整備計画」署名式
- 「パラオ保育園建設計画」引渡式
- 台湾によるパラオ経済刺激プロジェクトへの資金供与
- パラオとEUが再生可能エネルギー分野における協力に合意
- チェコ大使館がパラオ短期大学に本を寄贈
3日,在パラオ日本国大使館にて,草の根無償資金協力による平成27年度「ガラルド小学校スクールバス整備計画」契約の署名式が実施された。当館より田尻大使,パラオ側よりソアラブライ教育大臣,オイロー上院議員等が出席した。供与額977万8340円の本件協力では,生徒の安全な通学を確保するため,15人乗りマイクロバス2台が同小学校に供与される。
4日,パラオ保育園にて,草の根無償資金協力による平成25年度「パラオ保育園建設計画」引渡式が実施された。当館より田尻大使,パラオ側よりチン上院議長,エルデベエル官房長官,ソアラブライ教育大臣,テレイ・パラオ短期大学長等が出席した。本件協力により,乳幼児50名を収容可能な保育園が建設され,待機児童問題の解消と,保護者による日中の就学・就業の促進によって,親子の社会的自立支援へとつながることが期待されている。
28日,在パラオ台湾大使館は,2015年度経済刺激プロジェクトに対する資金として,170万ドルをパラオ政府に供与する引渡式を行った。同引渡式は,副大統領事務所で実施され,ベルズ副大統領及び財務省関係者が出席した。
8日,PIF総会の機会を利用して,パラオとEUが,「持続可能なエネルギー分野における協力強化に関するEU・パラオ共同宣言」に署名を行った。同宣言によれば,2014年から2020年にかけて,関連プロジェクト支援のため,パラオに対し,100万ユーロが供与される予定。
30日,パラオ兼轄の在フィリピン・チェコ大使がパラオを訪れ,英訳されたチェコ人作家による本及びチェコの文化・歴史に関する本を,パラオ短期大学図書館に寄贈した。寄贈式において,チェコ大使は,本件寄贈は,チェコとの人的交流があまり盛んではない国において,同国への理解を深めることが目的であると述べている。
◆その他
- ツーリズムEXPOジャパンにパラオが出展
- 2012年の邦人殺人事件容疑者を再起訴
24日から27日にかけて,パラオ政府観光局及びホテルやツアー会社等のパラオ観光業者は,東京ビッグサイトにて開催されたツーリズムEXPOジャパンに参加した。
24日,司法当局は,2012年2月26日に発生した邦人殺人事件に関し,レモケット容疑者を第2級殺人罪及び故殺罪で再起訴した。同月29日に,同容疑者出頭の下,第1回公判が行われている。同容疑者は,2012年にも上記訴因及び加重暴行罪で起訴されているが,証拠不十分で起訴取下げとなり,釈放されていた。起訴取下げ後も,司法当局による捜査は継続され,今回の再起訴につながった。
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