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パラオ情勢(2014年8月)

 

※この月報は、パラオ国内の新聞やテレビ報道をもとに、在パラオ日本国大使館が作成しています。

◆政治

  1. パラオ内政
    • 司法長官の指名
    • 19日、4月以来空席となっていた司法長官のポストに、ジョン・ブラッドリー氏(米国人)が任命された。ブラッドリー氏は、米国テキサス州にて11年間地方検事を務めていたが、その際に扱った事件で、後に無罪が判明した案件があり、同氏の捜査に問題があったとの批判が高まった結果、地方検事選に落選した経緯がある。パラオ国内においても、国会議員を中心に、レメンゲサウ大統領の人選に疑問を呈する声が挙がっている。

    • 死亡認定法の成立
    • 13日、レメンゲサウ大統領の署名により、行方不明となった人物の死亡認定に関する法律が成立した。失踪した際に、特定の危険にさらされていたことが分かっており、そのため死亡したと判断することが妥当である場合に適用することができ、配偶者、家族、またその人物との間に利害関係が認められる人が最高裁判所に申し立てができるとしている。

    • 電子署名タスクフォース設置
    • 7月22日付大統領令により、政府内で電子署名を導入することを検討するためのタスクフォースが設置された。電子署名を導入することで経費削減、効率性向上が期待されており、官房長官や保健大臣がメンバーに任命されている。今後、保健省において試験的に3ヶ月間電子署名システムが導入され、その後本格的な実施を検討するとしている。

    • 生活習慣病に関する教育強化
    • パラオにおける生活習慣病の増加を受け、25日、保健省・教育省間の協力を促す大統領令が発令された。具体的には、両省合同のタスクフォースやワーキンググループを設立し、生活習慣病予防を目的とした教育カリキュラムを策定することが指示されている。

    • 前大統領による緊急事態宣言に関する違憲判決
    • 12日、最高裁判所により、トリビオン前大統領による2012年の緊急事態宣言は違憲であるとの判決が下った。本件は、4月に一度違憲判決が出た後、6月に判決無効とされ、今回再度判決が言い渡されたもので、当時アイメリーク発電所で起きた人的要因による火災が、国家緊急事態を宣言する根拠となるかが焦点となっていた。トリビオン前大統領は、パラオ語の憲法では、「災害」の際に緊急事態宣言が可能と規定されており、英文が「自然災害」と規定していても、英語版よりパラオ語版が優先されるとの憲法規定を理由に合憲を主張してきたが、今回の違憲判決は、憲法起草時の趣旨に鑑み、英文のパラオ憲法が「自然災害」と明確に規定していることを裁判所が重視したことが主な根拠となっている。


  2. パラオ外政
    • レメンゲサウ大統領のサモア訪問
    • 30日、レメンゲサウ大統領は、サモアにて9月1日から4日にかけて開催される小島嶼開発途上国(SIDS)会議に出席するため、パラオを出発した。大統領の他、センゲバウ天然資源・環境・観光大臣、ケソレイ官房副長官、サクマ報道官がパラオ代表団に含まれている。

    • 日・パラオ文化交流祭開催
    • 22日、東京青年会議所とパラオ政府観光局の共催、大使館後援のもと、日・パラオ外交関係樹立20周年を記念し、日・パラオ文化交流祭が開催された。日・パラオ間の文化交流を目的とし、当地にて定期的に開催されているナイトマーケットの日本版として催され、日本の伝統的遊びや食べ物、またパラオの料理等を約1600人が楽しんだ。また、東京青年会議所は、パラオの小学生達を対象に相撲大会も開催したほか、大統領や教育大臣を表敬訪問した。

    • 台湾の奨学金留学生が28人に
    • 既に台湾にて留学を開始しているパラオ人22名に加え、今回2014年度として、台湾政府及び国際協力開発基金(台湾の援助機関)による奨学金制度を通じ6名の留学が新たに決定し、台湾において同奨学金を通じて留学中のパラオ人は、計28名となった。新たに留学が決定した6名の内、5名が四年制大学、1名が大学院へ留学する予定としている。

    • PIF開催費用に寄付170万ドル
    • 6日、サダン財務大臣は記者会見で、PIF総会の開催に計170万ドル以上の寄付が集まったため、開催費用への国庫からの拠出は必要ないと発表した。ロシア(50万ドル)やパプアニューギニア(23万ドル)等の他、地元企業やNGOも寄付を行った。

◆経済

    • 石油法関連規則整備の延期理由
    • オビアン公共基盤・産業・商業大臣は7月23日付下院議長宛ての書簡で、下院決議で早期の整備が求められている石油法関連規則は、省内や大統領府との協議の結果、整備を延期しているとした。オビアン大臣は、同法で採掘許可証の発行可否は同大臣が判断できると定められていると強調し、環境対策が十分に保証されるまで同法の実効化を進めないとした。また、現行のカヤンゲル州とパラオエネルギー社の契約の中では、同州への利益配分が業界標準の50-60%に遠く及ばない12.5%であること、同社が採掘権を委譲できるとされていることが問題であると主張した。これに対し下院議員7名が、法律執行義務を果たす意思がないのなら、同大臣は辞任すべきとする強い語調の抗議文を提出した。

    • パラオ登録船舶126隻
    • 2012年に設立されたパラオ国際船舶登録には現在、ドバイ、ギリシャ、インド等世界各国の126隻が登録されていることが、登録を管理している米ISBマネジメント社により発表された。登録船舶はタンカーからヨットまで多様であり、パラオ政府は昨会計年度、約10万ドル(利益の30%)を受け取った。

    • グアム銀行とパラオ国家開発銀行提携の住宅ローン制度設立
    • グアム銀行は、パラオ国家開発銀行の保証による、1件10万ドルを上限とした総額5百万ドルの住宅ローンの融資を開始した。パラオ国家開発銀行は、民間の高度なサービスと国による保証を組み合わせた新たな試みだとしている。

    • 2015年度国家予算成立
    • 28日、2015年度国家予算(10月1日開始)が7588万6600ドルで成立した。2年連続で会計年度開始前に予算が成立し、レメンゲサウ大統領は近年で最速の合意だったと評価した。大統領案7127万2600ドルに、上院がパラオ公共事業公社(PPUC)への補助金341万9千ドル等、計578万7920ドルの増額を主張し、下院はそこから89万5000ドルの減額を主張した。両院審議会で2日間の議論の後、債務返済等、相違点については間をとるなどした結果、7616万600ドルで合意した。大統領は両院案からさらに27万4千ドル減額して署名した。

    • 7月までの観光客数
    • 2014年年初から7月までにパラオを訪れた観光客の総数は70,710人であり、昨年同期比に比べ19.97%増加した。内、日本人は21,805人(前年同期比10.83%増)、台湾人は19,721人(同27.67%増)、韓国人は8,489人(9.49%減)であった。他方、中国本土(含香港)からの観光客は12,283人(同110.94%増)となり、激増している。

    • 台風被害の草の根支援引渡し
    • 昨年11月に台風ハイヤンの被害を受けて、我が国草の根・人間の安全保障無償資金協力を行っていた小学校3校のうち、20日にガラロン小学校食堂、22日にカヤンゲル州の小学校の引渡式が行われた。残るアイメリーク小学校の教室は、9月5日に引渡式が予定されている。

    • ADBパラオ開発調整事務所開設
    • アジア開発銀行(ADB)の開発調整事務所がコロール市内に開設され、開所式にはPIF出席のため来訪中のデイビスADB副総裁、サダン財務大臣兼ADBパラオ代表等が出席した。当地にはADBコーディネーターが1名いるが、これまで特定の事務所はなかった。ADBは現在パラオに対し、下水道施設改善のための借款事業を行っている。2015-2017国別事業運営計画では、計画されている光ファイバー海底ケーブル敷設事業に2500万ドルの融資を行う準備があり、2017年からは上水やエネルギー関連の融資を行う可能性があると発表した。

    • 外来種対策に140万ドル
    • 7月28日、レメンゲサウ大統領は生物多様性に関するPIFサイドイベントにて、グローバル環境ファシリティ(GEF)からのパラオへの生物多様性資金割当より、140万ドルを外来種対策にあてると発表した。地域生物安全保障計画と保護区管理システムへの外来種プログラム組み入れにそれぞれ50万ドル、個々の外来種撲滅プロジェクトに40万ドルが割り当てられる。

◆その他

    • 携帯サービス会社訴訟問題
    • 携帯電話3Gサービスや無線インターネット提供会社であるパラオ・モバイル・コーポレーション(PMC)は、7月に突然全サービスを運営停止し、4日、パラオ・ロイヤル・リゾート(PRR)の所有者、運営者であるロイヤル・パラオ・エンタープライズ及びJAL Hotels Co.により、提訴された。同ホテルは、PMCとサービス提供の契約を行っており、今回の運営停止は、同契約違反であるとし、賠償を求めている。