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パラオ情勢(2014年4月)

 

※この月報は、パラオ国内の新聞やテレビ報道をもとに、在パラオ日本国大使館が作成しています。

◆政治

  1. パラオ内政
    • 前大統領による緊急事態宣言に違憲判決
    • 2011年11月に発生したアイメリーク発電所における火災を受けてトリビオン前大統領が当時発出した国家緊急事態宣言に関し、1日、最高裁判所により違憲判決が下った。同発電所にて発生した火災は、パラオ憲法(英文)により定められている緊急事態を宣言できる条件の一つである「天災」にあたらないことが判決理由とされている。一方、トリビオン前大統領は、パラオ語版憲法における該当箇所の表現は「天災」ではなく「災害」としているとし、判決に反対するコメントを発出、5月1日には、最高裁判所長官に対し異議申し立てを行っている。

    • 2014年大統領年次報告
    • 24日、レメンゲサウ大統領は、昨年1月に政権が発足して2度目となる議会に対する年次報告を行った。同年次報告には、各閣僚、上下両議員、各州知事、伝統酋長などが出席し、パラオ内のインフラ整備の見通し、海洋保護区設置案の重要性、PIF総会に向けた取り組み等について言及した。

    • 教育大臣の就任
    • 7日、大統領より指名されていたシントン・ソアラブライ氏が上院にて3分の2以上の賛成票を獲得し、教育大臣就任が決定した。24日、レメンゲサウ大統領による年次報告に合わせ宣誓式が行われ、昨年1月に現政権が発足してから1年以上経ちようやく全閣僚が出揃うかたちとなった。

    • 各法律の成立
    • 24日、以下の3法案が大統領署名をもって成立した。

      (ア)臨時特別検察官設置法
      2010年5月以来空席となっている特別検察官のポストに関し、大統領による指名後に上院による承認がなされなかった場合、司法長官が臨時特別検察官を任命できる旨定めた法律が成立した。同法によると、臨時特別検察官ポストは、司法長官の指導下にあり、最高2年間を任期とし、大統領指名、上院による承認を経て正規の特別検察官が誕生した場合は自動的に失効するほか、司法長官による罷免が可能であるとしている。

      (イ)改定刑法
      米国の模範刑法典を参考に、刑事事件における訴追手順を明確にする等、現行の刑法を更新する法律が成立した。同法は、マネーロンダリングやサイバー犯罪など新種の犯罪事例についても規定しており、コンピューターのハッキングといった事案にも対応している。

      (ウ)暫定州政府法
      選挙を通じた州政府発足が期日までになされなかった場合に、業務が停滞することを避けるため暫定州政府を立ち上げる権利を各州に認める法律が成立した。同法によって、州知事選挙にて規定の得票数を得た候補者がいなかった場合など、選挙結果によって起こりうる州政府の機能不全が回避されることが期待される。


  2. パラオ外政
    • ペリー・テキサス州知事のパラオ訪問
    • 米国テキサス知事であるリック・ペリー氏がパラオを訪問し、10日、両院合同議会にて演説を行った。今回の訪問は米国NGO団体ベントプロップ(BentProp)による遺骨収集計画に同行したもので、演説の中でもパラオにおける遺骨収集活動の重要性について言及された。また、議会採択により、パラオ名誉市民の称号が同知事に授与された。

    • レメンゲサウ大統領のハワイ・クック諸島訪問
    • 27日、レメンゲサウ大統領は5月5日に開催されるパシフィック・プラン・レビューのための特別首脳リトリート会合に出席するためパラオを出発した。大統領一行は、クック諸島に向かう途中でハワイに立ち寄り、2014年アウトリガー・グローバル・リーダーシップ会合に出席する他、地元のパラオ人コミュニティと交流を行う予定としている。

    • パラオ・比間EEZ(排他的経済水域)画定協議
    • 7日、比外務省において、パラオ・比間EEZ境界に関する第一回技術会合が行われた。同会合は、両国EEZの起点及び範囲の確認を目的として実施され、双方は重複の可能性がある海域を含むEEZに関する協議を継続させていくことで合意した。

◆経済

    • 中国資本ホテルの下水処理問題
    • 建設が進む中、近隣の国立公園に浄化槽を設置する計画が地元の反発を呼んでいた中国資本のパラオ・バケーション・ホテルに対し、1日、環境管理委員会(EQPB)は、以前発給した浄化槽設置許可書が無効となった旨通知した。同許可書が規定する、許可書発効から3ヶ月以内の浄化槽設置作業開始の義務が遵守されなかったためとしており、ホテル側は下水処理の代替案を模索していると見られる。

    • ADB下水道ローン署名
    • 3月28日、サダン財務大臣と中尾アジア開発銀行(ADB)総裁は、マニラのADB本部にて、総額約2880万ドルの「コロール・アイライ衛生計画」借款合意書に署名した。コロール州内の下水処理場や集水設備の整備・修繕の他、人口増加傾向にあるアイライ州に新たな下水システムを導入する等の事業を、2022年2月にかけて順次行うこととなる。ADBによるパラオへの融資は、2011年署名の上下水道公社設立にかかる1600万ドルのローンに続く2件目。

    • 米国から未成年飲酒対策に720万ドル供与
    • 保健省は、未成年飲酒防止のための事業計画・実施のため、米国から年140万ドルを5年間、計720万ドルが供与されることになったと明らかにした。パラオでは近年、高校生を中心とした未成年の高い飲酒率が問題となっている。

    • アイメリーク発電所開所式実施
    • 23日、田尻大使及び外務省の児玉大洋州課長出席のもと、平成24年度対パラオ無償資金協力「首都圏電力供給能力向上計画」により完成したアイメリーク発電所の開所式が執り行われた。既に商用運転は開始されているが、正式な引渡しは管理運用に係る研修の終了後5月末の予定。5MWのディーゼル式発電機2基と発電所建屋が整備された本事業により、パラオの総発電能力は27MWとなり、長期的な国内電力供給能力の安定化が期待される。

    • パラオ人熟練労働力法成立
    • 24日、パラオ短期大学に職業資格認証コースの設立を義務づけ、パラオ人熟練労働者を年2万ドル以上の報酬で雇用した企業に四半期につき1万ドルの免税措置を与えるという「パラオ人熟練労働力法」が成立した。パラオは外国人労働者への依存率が高く、同法の成立によってパラオ人熟練労働力の育成と雇用の促進が期待されている。

    • 上院と州知事が石油採掘関連の規則整備を要求
    • 州知事を中心としたカヤンゲル州政府は、関係政府機関に宛てた書簡にて、同州における石油試掘計画実現に向け、資金管理、環境規制、採掘ライセンス等に関する規則整備を進めるよう要請した。これに続き上院は、レメンゲサウ大統領に対し、2011年12月に成立した「国家石油法」に基づく関連規則整備を急ぐよう求める合同決議を採択した。

    • 3月までの観光客数
    • 2014年年初から3月までにパラオを訪れた観光客の総数は33,198人であり、昨年同期比に比べ4.3%増加した。内、日本人は12,422人(前年同期比6.96%増)、台湾人は7,213人(同10.58%増)、韓国人は4,030人(11.39%減)であった。他方、中国本土からの観光客は4,473人(同18.49%増)となり、韓国からの観光客よりも多くなった。

◆その他

    • 多数の鶏が死んだ問題
    • アイライ州にある養鶏場にて、2月末から3月初旬にかけて約350羽の鶏が死に、鳥インフルエンザの疑いがあり検査を行っていた件に関し、9日、保健省により、鳥インフルエンザではないという結果が発表された。

    • 覆面強盗事件等の発生
    • 4月27日より5月5日までの間に、覆面をした犯人による事件が3件発生した。覆面の2人組が市内スーパーマーケットに強盗に押し入り店員を暴行した事件は犯人が逮捕されている一方、中国人夫妻に対するひったくり事件は未だ犯人は未特定、覆面6人組による9台の車両破壊事件も、未だに1名を除き犯人逮捕に至っておらず、警察が捜索を続けている。