ホーム>政治・経済>パラオ情勢>2011年7月

パラオ情勢(2011年7月)

2011年7月29日

※この月報は、パラオ国内の新聞やテレビ報道をもとに、在パラオ日本国大使館が作成しています。

◆政治

  1. パラオ内政
    • 2012年度予算案提出
    • 7日、トリビオン大統領は2012年度の予算案を議会に提出した。予算は総額$58,798,000米ドルとなっており、昨年度に比べ10%の増額である。新たな財政支出として、最低賃金を今後3年間に$3.50に漸次上昇させる策、公務員に対し「物価上昇手当」(Cost of Living Allowance:Cola)として2週間毎に$20を支給する策、現在51世帯ある無収入世帯に対し1ヶ月あたり$100米ドルを支給する策等が提案されている。そのための新たな収入源としては主に外国人観光客からの税収増額を見込んでおり、現行$15のグリーン・フィーの$30への増額、ホテル税の10%から15%への増額、スキューバダイビング客に対してダイビング税(1ダイブあたり$1)の導入が提案されている。グリーン・フィーは、当初環境保護を目的として創設されたが、今回の予算案では各州政府への交付金としての利用が提案されており、物議を醸している。同予算案は今後下院及び上院での承認を得た後成立する。

    • グリーン・フィーの精査要求
    • 外国人がパラオ出国時に支払いを義務づけられているグリーン・フィー(現行1名15米ドル)について、6名の上院議員がその資金管理を疑問視し、22日、公的監査事務所に精査を依頼し、財務省の銀行取引記録等の提出を要求した。グリーン・フィーは環境保護を目的として外国人から徴収され、財務省が独立した口座に保管後、法令に基づいて使用されるよう議会が定めているが、その資金管理の不透明性がこれまでも指摘されている。

  2. パラオ外交
    • 対米国
    • 6月18日に「ト」大統領が米国で行われた第二次コンパクト協定承認に向けた証言後、米国議会より「ト」大統領に対して送付された追加質問状に対し、大統領が書簡にて回答した。書簡の中で大統領は中国本土からの投資計画や、米国グアンタナモ収容所からウイグル人を引き受けたことにより建設が滞っている中国系のホテルや中国本土からの観光客数の低迷などに触れた。また中国以外にアラブ諸国やキューバ等の国々もパラオへの影響力を高めたがっていると述べた。

    • 対台湾
    • 8日から12日にかけトリビオン大統領は台湾を訪問し、馬総統関係者の息子の結婚式に出席した。

    • 対フィリピン
    • 先月発生したパラオ人少年によるフィリピン人労働者の殺害事件を受け、トリビオン大統領は8日、台湾へ向かう経由地であったマニラ空港において、被害者の家族と面会し、哀悼の意を述べた。

    • 大洋州地域
    • 26日~29日にかけ、ミクロネシアにおいてミクロネシア大統領就任式、ミクロネシア地域行政首長サミット、ミクロネシア大統領サミットが開催され、トリビオン大統領を含む8名の代表団がミクロネシアのポンペイ州を訪問した。

    • 対日本
    • トリビオン大統領及びヤノ国務大臣は、往訪中のミクロネシアにて菊田特派大使と面会し、意見交換を行った。(参考:外務省ホームページ「菊田特派大使(外務大臣政務官)のミクロネシア連邦訪問について(概要)」

◆経済

    • 電力供給問題
    • パラオ政府によるパラオ電力公社(Palau Public Utilities Corporation: PPUC)への電力料金の未払いのため、PPUCは一定期間コロール州の基幹道路沿いの街灯を消灯していたが、その際に見通しが悪くなっていた地域で先月殺人事件と自動車事故が相次いで発生し、2名の犠牲者が出た(うち自動車事故の犠牲者は邦人)ことを受け、PPUCは同街灯を今月より点灯することとなった。政府の電力料金の未払いは現在も継続しており、7月末までに2.7百万米ドルが支払わなければ、政府庁舎への電力供給が部分的に停止される可能性がある。

    • 観光業
    • パラオ経済の中心を担う観光業について、6月期の集計が発表され、1ヶ月間に計7、489人(前年同月比62.4%増)の観光客が訪れ、うち台湾人観光客は3,526人(同173%増)、日本人観光客は1,774人(同65%増)となった。2011年上半期間に48,436人の観光客がパラオを訪れており、これは昨年の同期間に比べ1万人以上の増加である。台湾人観光客の急激な増加は、ユナイテッド・コンチネンタル航空のパラオー台北間の直行チャーター便の増便が影響している。その一方で、韓国からの観光客は今年に入り減少しており、上半期間はいずれも前年比10%から50%減となっている。

◆その他

    • 事件・事故の多発による救命救急対応の急増
    • 保健大臣及びパラオ国立病院の全医師21名は「社会的テロ(Social Terrorism)が救命救急室を麻痺させる」と題し、6月下旬から7月上旬にかけての2週間あまりの期間に発生した傷害事件などによる救急患者数が、過去10年間で最悪の事態であるとして、大統領に書簡で迅速な対応を取るよう要請している。6月20日から7月5日の間に、パラオ国内で65件の傷害事件が発生した。内訳は、5件の自殺未遂事件、3件の頭部への深刻な傷害事件、6件の刺傷事件、2件の死亡事件、及び27件のアルコール関連事件等であった。同院の救命救急室はこれらの患者の対応に追われた。

    • 小学校の統廃合
    • 政府の財政縮小対策の一環として、現在バベルダオブ島の各州に配置されている小学校の統廃合が検討されており、2011年8月の新学期より、マルキョク州・エサール州・ニワール州の3校が、マルキョク小学校に統合されることが決定された。今後その他の州についても漸次統廃合が進められる予定。

    • パラオにおける人身売買
    • 米国国務省が今月発表した「2011年度人身売買報告」によると、パラオは「Tier2」に属し、4段階のカテゴリーの中で上から2段階目であり、一定の対応策は取られているが、フィリピン人、中国人、バングラデシュ人等に対する強制労働や売春強要の事例が発生しているとの現状が報告された。(参考:日本はパラオと同じく「Tier2」に属する。)

    • 第1回タロ祭り開催
    • 9日の憲法記念日の休日にあわせ、コロールで社会文化省主催による第1回タロ祭りが開催された。かつてはパラオ人の主食であったタロいもが、女性の社会進出や食生活の米国化に伴い消費量が減ったことを受け、タロの良さを見直す目的で実施された。