パラオ便り(第12回ベラウ・ナショナル・ゲームズ)

令和元年6月28日
パラオでは、1年に1度、日本の国体にあたるベラウ・ナショナル・ゲームズ(通称ベラウ・ゲームズ)が開催されます。今年はパラオの全16州が参加して、6月14日~23日の日程で全17競技が行われました。14日にパラオ国立体育館で開催された開会式では、お揃いのTシャツ(ユニフォーム)を着た各州の選手たちが州旗を先頭に入場。開会式のレメンゲサウ大統領による挨拶では、大統領が20回ほど腕立て伏せを披露する場面があり、大きな拍手と歓声で会場はとても盛り上がりました。

 
    
開会式の会場(左)と腕立て伏せをする大統領(右)



州旗を先頭に入場する選手たち
 

17の競技の中でも、南国ならではの競技が「ミクロ・オール・アラウンド」と呼ばれる競技。この競技には、全部で6つの種目があり、そのうち4種目を男女それぞれが戦って、総合得点を競います。種目は、ヤシの木の早登り、水泳、海に浮かべたココナッツの実へのやり投げ、スピアフィッシングそしてココナッツの実の殻の早むきと果肉削りです。
 
朝一に行われたヤシの木の早登りでは、ヤシの木の地上10mくらいのところに結ばれたリボンに触って降りてくるという上り下りを3回連続して行います。スタートの合図とともに選手たちはヤシの木を素手と裸足でスルスルと登り、あっという間に3往復を終えて地上に戻ってきました。パラオ人の生活に欠かせないココナッツは、昔に比べると減ったそうですが、今でも登って取る人がたくさんいるそうです。

 

ヤシの木の早登り

 
ヤシの木の早登りが終わると、選手たちは海に向かい、今度は海に的として10個ほど浮かべられたココナッツの実に向かってやりを投げ、3か本のやりが何本刺さるかを競います。この競技のいくつかの種目には女性も参加しています。力強く投げられたやりが海に浮かぶココナッツに命中する度に、観客からは歓声が上がっていました。

 

海に浮かぶココナッツめがけてやりを投げる女性選手

 
最後に行われたのが、ココナッツの殻の早むき、そして果肉削りです。ココナッツの殻の早むきは、地面に打ち付けられた先端の尖った木の棒を使って行われます。スタートの掛け声とともに選手たちは、一斉に硬い殻で覆われたココナッツを器用に棒に打ち付けながら、殻を剥がしていました。
 

ココナッツの殻の早むき
 
その実をナタで割って、果肉をいかに早くきれいに削り出すかを競うのが女性選手の種目。それぞれが自前のココナッツの果肉を削るイス付きの道具を持参し、器用にココナッツを削り出していました。観客からは、『カルイ、カルーイ(日本語の「軽い」が語源ですが、パラオ語では「簡単、楽勝」という意味)』という掛け声が選手にかけられていました。

 

ココナッツの果肉を削り出す女性選手

この競技、実はパラオだけではなく、4年に一度ミクロネシア地域の国や州が参加して行われるミクロネシア地域のオリンピック「ミクロネシア・ゲームズ」でも公式競技になっています。パラオの外から来た人が見るとどれも物珍しい種目ばかりのミクロ・オール・アラウンド。一方で、パラオやミクロネシア地域に住む人たちにとっては、昔からどれも日々の暮らしの中で当たり前にやってきていることばかりなのだと思います。最近ではこの競技に出場する若者は減っているそうですが、ミクロネシア地域特有のユニークな伝統競技が今後もこの地域の人たちによって継続されていくことを願っています。
 
ミクロ・オール・アラウンドを含む全17競技は10日間の熱戦を終え、23日に閉幕しました。総合優勝は最も出場選手数の多かったコロール州で、81個の金メダルを獲得しました。翌日の新聞には、喜ぶ選手たちの様子が大きく取り上げられていました。

 

コロール州の総合優勝を伝える新聞記事

日本でオリンピック・パラリンピックが開催されるまで残り約1年。オリンピックに、ミクロ・オール・アラウンドのような競技があれば、パラオ初のメダルが期待できるかもしれません。ぜひ来年のオリンピックでは、開会式の入場行進や各競技でパラオの選手たちを探して応援して下さい。きっと、このベラウ・ゲームズでメダルを取った選手たちがパラオ代表として活躍しているはずです!