JICAボランティアエッセイ(伊藤洋美JV)
平成30年5月24日
もし、日本のデザイナーがサンゴ礁センターで働いたら。
昨年10月、短期ボランティアとしてパラオ国際サンゴ礁センター(PICRC)に赴任した伊藤洋美と申します。私の仕事はグラフィックデザインで、PICRCの広報ツール、展示ポスター、研究発表ツール、お土産などのデザインをしていました。サンゴ礁センターをわかりやすく魅力的にするのが私の活動です。
(左:サンゴ礁センターのファンドレイズ・イベントのために製作したロゴ。 中央:ウォーターコンサベーションキャンペーンのTシャツ。 右:サンゴ礁センターの活動リポート。)
日本のグラフィックデザイナーの多くは広告制作会社に勤務しています。私も多くのデザイナーの一人で、広告制作会社に9年ほど勤務していました。日本の広告業は消費促進が主な仕事になっており、近年、危惧されている環境破壊・資源枯渇を推し進めるような仕事がほとんどになります。デザインは本来、何か問題を解決するものなので、もっと違う仕事のあり方ができないものかと考えて、協力隊に応募しました。それが今から約5年前になります。
最初にアフリカのボツワナ共和国に約3年、長期派遣の協力隊で赴任。国立博物館で展示デザインや広報のデザインを担当していました。
ボツワナはアフリカの内陸国で、パラオとは全く逆の特徴の国。国土の7割がカラハリ砂漠に覆われており、川は枯れているところがほとんどで、魚を食べる習慣がありませんでした。
パラオでは魚や刺身を食べることができ、赴任当初から大興奮。ボツワナで食べれなかったぶんはこの8ヶ月で取り返した感があります。
国の様相は違いますが、ボツワナとパラオは人の感じはすごく似ています。誰もが平和で親切でリラックスしています。たぶん、日本人が真面目すぎるので、他の国がリラックスしているように感じるのだと思います。パラオの親切な人々のおかげで、とても簡単に働き始めることができました。
ここに来る前にサンゴ礁や海洋生物について私はよく知りませんでした。ですが、サンゴ礁や海洋生物、パラオについて私が知らないのであれば、PICRCで何かをデザインしたり改善したりすることは不可能です。必要を感じて、ダイビングやスノーケリングをするようになりました。海で泳ぐのは初めてで、最初の頃はとても緊張しました。
でもすぐに、パラオの海に魅了されました。とても美しく、興味深い生態系があります。それらをまとめてお土産を作っていくことはとても楽しい作業でした。
(左:サンゴ礁センター・オリジナル・クリアフォルダー 右:ココナッツソープ サンゴ礁センター・オリジナルパッケージ いずれもパラオ水族館のお土産ショップで販売中)
私はパラオの伝統的な釣りの方法に興味を持ちました。パラオには”Bul”という古くから、トラディショナルチーフが漁のルールを決めてそれに従い、とりすぎを避け、次の世代に資源を残してきた制度があるのです。
商売のための漁業に対し厳しく規制し、個人が生活のために魚を釣ることは極力許す、私はこのルールの作りがとても興味深いと思っています。農作物や漁を経済という土俵にのせると、生態系のバランスは劇的に崩れると思うからです。
(レイアウト担当したマリンサンクチュアリのパネル)
パラオ水族館ではそういったパラオの伝統的な漁の方法の展示、パラオの主な5つの生態系の展示をしています。私は現在の水族館の展示は開館から時間が経ってしまい、古い情報も多く、改善の必要性を当初から感じていました。もっとわかりやすく、よくできると思っています。
私はこの8ヶ月で自分の活動を終わらせることができませんでした。パラオ水族館をもっと魅力的にできると思うし、やったほうがいいと思う。そのために、サンゴ礁センターのスタッフとして、11月より1年間の契約をする予定です。
最後に、ホストファミリー、PICRCの皆様、パラオの友人たち、テニスの相手をしてくれた皆様、感謝を込めて。ありがとうございました。またすぐお会いしましょう。