パラオで活躍するJICAボランティア:尾形理

平成29年3月22日

My magnificent life in Aimeliik

算数の授業風景
暗算大会表彰式
尾形 理
アイメリーク小学校
 
「センセー、算数の宿題ある?」
「へっ?!宿題欲しいの?」
「Yes!!」
「………分かった、後で作って持っていくから。」
「イェーイ!」 ドタドタドタ…
こんなやり取りをできるのもあとわずかだと思うととても寂しく感じます。
 
私が派遣されているアイメリーク小学校は、全校生徒50人余り、教職員数15人。アイメリーク州内だけでなく、隣のガッパン州の一部からも児童が通学してきます。州内の多くの道はデコボコ砂利道で、しかも集落同士が離れているので、多くの子がスクールバスにガタゴト揺られながら登校してきます。
 
私の主なミッションは算数の改善。パラオの地方部に暮らしている子どもたちは、お金を使う経験、長さや重さなどを測る経験をしたことがあまりなく、算数の問題を読んでもその状況を想像することがなかなかできません。1年生においては数を数えることすらなかなか上達しない子も多いです。学年が上がって小数や分数の計算が始まっても、位取りや分母や分子の意味がピンとこず、とにかく先生に言われるがままに課題をこなすだけで、習って数日もするとやり方を忘れてしまう子がほとんどです。そんな子達が少しでも習ったことを定着させることができるよう、ブロックを使ったり、図や絵の見本を示したりして、子どもたちに分かりやすい授業をすることを同僚の先生たちに勧めてきました。
 
また、パラオではなかなか家庭学習が定着しておらず、それも学習の定着が進まない原因です。パラオの現代っ子は、命じられた家事の手伝い以外はテレビとスマホゲームばかりして、なかなか自宅で勉強をしません。そこで、子どもの苦手な部分に合わせたヒントをのせた宿題プリントを作ったり、全校計算大会を予告して自宅で勉強してくるように求めたりして、家庭でも勉強してくるように後押ししてきました。今年度は3回に渡って実施した全校暗算大会では、学年の壁を越えて競い合う形をとったことで、気合が入った子たちはちゃんと家で勉強してきてくれました。最近勉強を頑張っていた子や、暗算大会のために自宅でちゃんと勉強した子がチャンピオンになる様子が見られ、とても嬉しかったです。また、多くの同僚の先生たちも子どもたちと一緒に同じ問題にチャレンジし、基礎計算力の大切さを共感してくれたようです。
 
私はアイメリークのパラオ人家庭にホームステイしています。学校までは車で15分足らず。8年生の先生であるホストシスターと毎日車通勤です。我が家は海から数百メートルさかのぼった川のほとりに立つ、ちょっとした“水上ハウス”です。満潮時は家の下が水に浸かってテッポウウオが泳ぎ、干潮時は水が引いて色とりどりの小さなカニが踊り出します。
 
私にとってアイメリークの一番の魅力は夕日が綺麗なこと。西に海を臨むアイメリークには夕日がきれいに見えるポイントがいくつもあります。特に、テラスと呼ばれる古代集落のあった丘や、発電所近くにある船着き場は、水平線に沈む夕日がきれいに見えてお気に入りの場所でした。また夕日の時間帯になるとコウモリが飛ぶ姿も見られ、オスのフルーツバットの雄大な飛ぶ姿は圧巻で、これも私のお気に入りの一つでした。
 
そんなアイメリーク生活もあとわずか。もうすぐアイメリークを離れなければならないことはとても寂しいです。特にアイメリーク小学校の子どもたちや先生たちと離れるのはとても悲しいです。いつの日か、またアイメリークに戻ってきて、成長した子どもたちに会えることをとても楽しみにしています。
体育の授業風景
アイメリークの夕日