パラオで活躍するJICAボランティア:江副真弥
平成29年3月14日



Education is my life
ジョージBハリス小学校
江副 真弥
私は、コロール島内の小学校で算数を教える活動をしていました。主な目的は2つ。1つは先生たちの指導力向上、もう1つは子どもたちの学力向上です。この2年間で、4~6年生に携わらせてもらいました。現地の先生が前に立って授業を行う中、私は教室を回って個別指導をし、放課後には先生たちと話して次の日の授業の計画を立てる、というのが主な活動内容でした。パラオの小学校に入って驚いたことはたくさんありますが、一番衝撃的だったことは、自分で考えようとしない子どもがいたことでした。私は現職教員なので、日本でも小学校で働いていたのですが、その経験から、「分からない問題にぶつかったときでも、子どもはどうにかして答えを出すために考えるものだ」と思っていたのです。
ですが、パラオで初めて会った、ある学年の子どもたちは、難しい問題にぶつかったときには、「分からないから解かない」という選択をしていたのです。「子どもは考える」という私の中の常識は、ここでは常識ではありませんでした。
それから毎日、子どもたちを学習に向かわせるため、先生と協力をしながら手立てを考え、授業を展開していきましたが、初めの1年間はあまり上手くいきませんでした。その学年は、普段は愛嬌があってとても可愛らしいのですが、授業になるともうほとんど学級崩壊状態。学習規律が整えられていなかったので一斉指導ができず、一人ずつ同じことを説明して回る日々が続きました。同じことを何回も言って回ったおかげで私の英語力は伸びましたが、子どもたちの算数の力はどうか・・・。
そんな子どもたちに変化が見えてきたのは2年目でした。彼らが進級し、学校生活に変化があったことも要因の一つだと思います。彼らは、分からない問題も自力で解こうとするようになりました。答えを出すまでの途中の式も、進んでノートに書くようになりました。何よりも、授業中に子どもたち全員が前を向き、話を聞きながら考えている姿が見られるようになったことを、とても嬉しく思いました。もちろん成績も右肩上がり。子どもたちの表情が見違えるように生き生きして、算数の学習を楽しむようになりました。前年度、子どもたち自身も「このままではいけない」と思っていて、変わるきっかけを探していたのかもしれません。自分で解けた答えを「見て~!できたよ!」と言いながら笑顔でノートを持って来る子や、「あとは自分でやるから行っていいよ。」と、寂しいけど嬉しい言葉を言ってくれる子も増えました。
そんな子どもたちの変化を見ながら、先生と協力して頑張ってきた最初の1年間の努力が実を結びつけてきたこと、そして、この子どもたちと出会えたことを、心から嬉しく思います。
また、2年目に入ってから、先生たちからも「もっと上手に授業をしたいから、アドバイスをちょうだい」や、「うちのクラスにも教えに来てよ」などと言われるようになり、自分が必要とされていることが、素直に嬉しかったです。遅くまで学校に残って教室を片づけたり、おしゃべりをしたりしながら、先生たちと一緒に過ごす時間が大好きでした。
パラオの子どもたちと出会って、教育の楽しさを再認識することもできました。教師は、子どもたちの変化を見届けることができる良い仕事です。日本に帰ってからも、これから受け持つ子どもたちの成長を信じて教育活動を行っていこうと思います。