インタビューシリーズ~活躍する帰国留学生~ 第6回 カイポ・レエウンゲルさん

令和5年11月22日
      

カイポ・イバブ・レエウンゲルさんの好きな言葉は「一期一会」です。日本政府(文部科学省)奨学金制度を利用して日本に留学したレエウンゲルさんのストーリーは、まさに「一期一会」を体現するもので、新しい経験やチャンスを喜んで受け入れることを教えてくれます。
 
レエウンゲルさんはパラオの小学校を出た後、ミクロネシア連邦チューク州にあるザビエル高校に4年間通いました。ザビエル高校を卒業後はパラオに戻り、2001年にパラオ短期大学に入学しました。
 
パラオ短期大学で1セメスターを過ごした後、2001年4月に、日本政府の奨学金を得て日本に留学することになりました。レエウンゲルさんは新たな生活にうまく適応し、たくさんの素晴らしい思い出を作ることができました。文化外国語専門学校で1年間日本語を学んだ後、トラジャル旅行ホテル専門学校(現ホスピタリティツーリズム専門学校大阪)で2年間観光について学び、2004年に卒業しました。
 
日本での1年目は学校の寮で暮らしました。高校時代に家族の元を離れて暮らした経験があったので、寮生活に慣れるのは楽だったそうです。寮を出たあとは、運良くその寮のすぐ近くで見つけたアパートで暮らしました。
 
勉学だけでなく、池袋にある「貴美旅館」という旅館での2年間のアルバイト経験が、さらなる成長をもたらしました。レエウンゲルさんの仕事は、宿泊客に旅館の説明をしたり、送迎の手配をしたりすることでした。その旅館のオーナーが戦前に看護師としてパラオで働いていたこと、そしてオーナーのご主人はパラオでホテルを経営していたことを偶然知り、とても驚いたそうです。
 
レエウンゲルさんは、そのほかにも、幼稚園の生徒にパラオの伝統的なダンスを教えるアルバイトも経験しました。アルバイトや学友とのキャンプ、日本人の家族や友人とのホームステイを通して、日本語を短期間で習得しただけでなく、日本の文化や人々について多くのことを学びました。
 
さらに、レエウンゲルさんは日本のお祭りの大ファンです。実際に日本のお祭りに参加してお神輿を担ぐこともありました。参加者がひとつになって、お神輿を最終目的地まで担ぐために協力し合う姿が大好きだそうです。また、夏休みに忍者屋敷を訪ねたことも、楽しい思い出のひとつです。さらに、茶道を体験したこと、コンサートに行ったこと、NHKのど自慢を観覧に行ったことも思い出に残っているそうです。
 
パラオに戻ってからは、観光、教育、健康促進や環境保全などさまざまな分野の仕事を通じパラオに貢献してきました。時には日本語教師、通訳、ツアーガイドとして働くこともあります。
 
さらに、2017年8月にはパラオで物流会社「ロードランナーカンパニー」を創業した起業家でもあります。パラオ商工会議所理事、ソンソロール男性組合会長、ソンソロール州メリール島の行政官としても活躍しています。
 
帰国留学生として、レエウンゲルさんは日本大使館が主催するパラオでの広報文化活動に積極的に協力しているほか、世界各国の帰国留学生と繋がる帰国留学生総会にもパラオ人帰国留学生を代表して参加しています。
 
レエウンゲルさんは、2024年の日本とパラオの外交関係樹立30周年を楽しみにしています。日本とパラオの関係は前進し、以前よりも強くなっていると感じており、沖縄や宮城県蔵王町など、以前からパラオと交流のある日本の自治体との交流がもっと盛んになることを望んでいます。また、日本の帰国留学生として、自分の経験や専門知識を地域レベルで役立て、地域社会からより多くの協力を得たいと考えています。そして、帰国留学生同士が連絡を取り合い、情報を共有し、日本文化の普及に貢献することが重要だと感じています。