インタビューシリーズ~パラオの日系人~ 第4回 セシリル・エルデベエルさん

令和5年9月5日


エルデベエルさんは、エサール州出身のパラオ議会上院議員です。エルデベエルさんは、パラオ人と日本人の親を持つ母とパラオ人の父の間に産まれました。エルデベエルさんの母は日本語を少し話したと言います。エルデベエルさんの祖父は日本人で、戦前に沖縄からエサール州に移住し、農業に従事しました。
 
エルデベエルさんは現在55歳。パラオ高校卒業後、パラオ短期大学に入学し、その後、ハワイ・パシフィック大学に学び、1994年に公共財政学学士を取得しました。
 
エルデベエルさんの母方の苗字は「ヤマシロ」でこれは沖縄に当時多く見られた苗字でした。エルデベエルさんの祖父はヤマシロ・ナベスケという名で、日本の統治下でパラオ人や他の日本人と共に農作物を生産していました。
 
戦争が終わると、沖縄からパラオに移住して働いていた者達をパラオから退去させ、沖縄に返す命令が発出されましたが、ヤマシロさんはすでにパラオ人の妻と3人の子どもがいたため、パラオを離れることを拒んだそうです。そして、命令が出ている数週間の間、近くのジャングルに身を潜め、沖縄に帰還する船がパラオを出発するまで隠れ抜き、最終的には妻と子ども達とパラオで一緒に暮らすことができたそうです。
 
エルデベエルさんの祖父が亡くなったとき、エルデベエルさんはまだ小さかったので、日本の血を引いていることや日本の文化などに触れることは少なかったと言います。しかし、2020年に、エルデベエルさんは来日の機会を得て、祖先や親戚を探すために沖縄を訪れました。苗字が「ヤマシロ」であるという限られた情報を頼りに、祖先や親戚を探すのは大変だったと言います。
 
沖縄では、いくつかの小さな地区に出向いたり、政府関係者等の協力を得て、エルデベエルさんの曾祖父と関わりを持つ男性に会うことができました。この男性からエルデベエルさんの祖父の家系図と思われる資料を見せてもらっている最中、初めて出会ったにも関わらず、こうして長い時を経て、関係性を見つけることができたことに、二人とも胸が熱くなったと言います。
 
沖縄に滞在中、エルデベエルさんは寿司、刺身その他の沖縄の特産品を堪能しました。沖縄はどこかパラオに似ているところがあり、エルデベエルさんは沖縄が好きになり、いつかここに住みたいと思っているそうです。
 
最後に、エルデベエルさんは、日本政府に今後、こうしてエルデベエルさんのようなパラオの日系人のため、日本のルーツを探し、より多くのパラオ日系人が日本人の先祖や親戚と繋がる手助けをして欲しい、こういう繋がりが、世代を超えてパラオと日本の関係強化に繋がると思うと話してくれました。
 

(沖縄を訪れた際の写真)