インタビューシリーズ~活躍する帰国留学生~ 第3回 ニライベラス・メトゥールさん

令和5年8月30日

ニライベラス・メトゥールさんはパラオから日本政府(文部科学省)国費外国人留学生制度を利用して山口大学大学院経済学研究科(修士課程)で学んだ帰国留学生です。メトゥールさんは現在、パラオの人的資源・文化・観光・開発大臣です。
 
米国ウィラメット大学で経営経済学の学士号を取得したメトゥールさんは、パラオに戻り、日本で学業を究めることを決意するまでの間、父であるローマン・メトゥール氏の下で働きました。1999年に他界したローマン氏は、メトゥールさんが日本で学ぶことを決断する上で大きな影響を与えたそうです。規律に厳しい父のもとで育ったメトゥールさんにとって、日本での学校生活はそれほど難しいものではなかったといいます。
 
2009年から2012年までは、トリビオン前大統領の特別補佐官を務めました。パラオ政府観光局の前理事長であり、現在はパラオ政府観光局、ベラウ国立博物館、中小企業開発センターなど複数の組織の役員を務めています。また、不動産、観光業、農業などの事業を経営する実業家でもあります。
 
メトゥールさんは人的資源・文化・観光・開発大臣として、労働、観光、歴史保護など政府の様々な部門で働く約2,000人の職員を監督する立場にあります。メトゥール大臣が人的資源・文化・観光・開発省にもたらそうとするのは、日本で学んだことだといいます。その学びとは、教室の中で起こったものだけではありません。日本人の生活習慣、文化、社会など、教室の外で学んだことが、メトゥール大臣が日本で得た学びの大きな部分を占めているのだそうです。
 
メトゥール大臣は、日本の社会的システムの一部をパラオに応用しようと試みています。例えば、車掌の動作からトイレの位置まで効率的な公共交通機関の仕組み、定年退職者による公園や公共エリアの維持管理のボランティア、日本の不動産の仕組み、公共イベントの収益を地域の事業者で分配する方法などです。メトゥール大臣は地域社会に密着して、人々が実際にどのように暮らしているかを研究しました。毎日、地域の年配者が集まる銭湯に行って常連客との会話を楽しみました。また、「青春18きっぷ」で日本中を旅することもありました。
 
メトゥール大臣は、日本は伝統文化と近代性が最もうまくミックスされた国だと考えています。パラオにとっても、固有の文化と効率化された仕組みのバランスを見つけることが重要だといいます。メトゥール大臣は、近代化と文化の維持・保全の両立は可能だと信じています。
 
2024年の日本・パラオ外交関係樹立30周年に向けて、メトゥール大臣は両国がより多くの人的交流を行うことで、パラオの行政の業務効率化を推進する方法を日本から学びたいと考えています。また、パラオの伝統的な文化である音楽、織物、宝飾品、陶芸、料理などの分野で両国の若者がつながり、より多くの交流が行われることを望んでいるそうです。