日本国とパラオ共和国との間の共同声明(2022年9月9日)

令和4年9月9日
1. 岸田文雄日本国総理大臣と、スランゲル・S・ウィップス・ジュニア・パラオ共和国大統領閣下は、2022年9月9日、東京で会談を行った。

2. 2024年が日本とパラオ共和国との外交関係樹立30周年の節目となることを念頭に、両首脳は 、自由、民主主義、法の支配及び人権を含む共通の基本的な価値と原則に立脚した、両国の伝統的、友好的及び協力的な関係を更に発展させることへのコミットメントを強調した。

「自由で開かれたインド太平洋」の推進

3. 両首脳は、 両国及びそのパートナー 国 が共有する基本的な価値及び原則に対する挑戦が高まる中、国の規模又は 国力にかかわらず、全ての国の権利、自由及び主権が国際法、国際的なルール及び規範により保護される、「自由で開かれたインド太平洋」を実現するとのコミットメントを再確認した。両首脳は、あらゆる形態の軍事的、経済的及び政治的威圧に反対するとともに、有害な偽情報に対抗していくことに改めてコミットした。

4. 両首脳は、東シナ海及び南シナ海における状況を引き続き深刻に懸念するとともに、力により現状を変更し、また、緊張を高め、地域の安定とルールに基づく国際秩序を損なう可能性がある、あらゆる一方的な試みに強く反対することを改めて表明した。 両首脳は、南シナ海におけるクレイマント国及びその他全ての国による全ての活動における非軍事化及び自制の重要性を強調した。 両首脳は、国際法、特に国連海洋法条約(UNCLOS)を尊重すること並びに航行及び上空飛行の自由を維持することの死活的な重要性を再確認した。両首脳は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。

5. 両首脳は、安全保障と経済の間の横断的な影響に鑑み、経済安全保障の推進における二国間協力を強化することを決定した。 両首脳は、政治的目的を達成するための経済的威圧に対する懸念及び強い反対を表明するとともに、国際法に基づく経済秩序の重要性及び経済的威圧への対応における緊密な連携の重要性を強調した。


ロシアによるウクライナ侵略


6.両首脳は、ロシアによるウクライナ侵略は、明白な国際法違反であり、特に国連憲章の重大な違反であること、また、ルールに基づく国際秩序に対する深刻な脅威であり、その影響はインド太平洋を含む欧州以外の地域にも及ぶものであることを再確認した。両首脳は、日本国及びパラオ共和国がロシアによるウクライナ侵略を明確に非難することを改めて表明するとともに、ロシアの即時撤退を要求した。両首脳は、民間人の殺害を含むロシアの非人道的行為を強く非難した。両首脳は、ウクライナの主権及び領土一体性への一貫した支持並びにウクライナの人々への支援において連携する意図を確認した。

7. 両首脳は、欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であるという見解で一致し、世界のいかなる場所においても、力や威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対する旨表明した。

地域協力

8. 両首脳は、気候変動等の共通の課題に取り組む上で、太平洋島嶼国の一体性と連帯の重要性を強調した。岸田総理は、PIF首脳がPIFファミリーの一体性を回復するための解決に向けた対話の継続にコミットしていることを歓迎した。
 
9. ウィップス大統領は、太平洋・島サミット(PALM)のプロセスを通じた太平洋島嶼国に対する日本の継続的なコミットメントと支援に対し、深い謝意を表明した。岸田総理は、日本の太平洋のキズナ政策の下、「オールジャパン」による取組を通じて日本と太平洋島嶼国との協力を更に強化するコミットメントを再確認した。両首脳は、(1)新型コロナへの対応と回復、(2)法の支配に基づく持続可能な海洋、(3)気候変動・防災、(4)持続可能で強靱な経済発展の基盤強化及び(5)人的交流・人材育成の5つの重点分野における協力に共に取り組むコミットメントを再確認した。
 
パラオ共和国の持続可能な発展のための二国間協力

10. 両首脳は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組の一環として、海洋安全保障を含む二国間の海洋協力の進展を認識した。ウィップス大統領は、日本国の政府及び団体によるパラオ共和国の海上保安能力強化のための支援と協力に謝意を示した。

11. 両首脳は、パラオ共和国における電力の安定供給に貢献する「送電網整備計画」の交換公文の署名を歓迎した。ウィップス大統領は、社会経済インフラ、人材育成、教育等の分野における、政府開発援助を通じた日本の長年にわたるパラオ共和国に対する開発支援に感謝した。
 
ブルー・プロスパリティ及び漁業協力

12. 海洋資源の保護とパラオ国民のための海洋資源の持続可能な利用のバランスを取りつつ、パラオ共和国の海洋の包括的な管理を目的とする、パラオ共和国のブルー・プロスパリティ・プランを認識し、岸田総理は、パラオ経済の復興に向け、インフラ、観光、漁業、農業を含む様々な分野における二国間協力の推進を継続するとのコミットメントを表明した。これに関連し、両首脳は、交通・観光分野における協力覚書の署名を歓迎した。
 
13. 両首脳は、日本の漁業者がパラオ共和国の沖合水域で操業してきた長い歴史を認識した。パラオ共和国が日本との協力により、日本の漁業者にパラオ共和国の排他的経済水域(EEZ)における操業機会を与えてきたことを想起し、両首脳は、この協力がパラオ共和国の国民及び日本の漁業者に相互の社会・経済的な利益を提供するために強化され得るものであるとの見解を共有した。パラオ共和国が、その水域における生産と保護との均衡のためのプロセスに着手したことを考慮し、両首脳は、この協力を強化するため、引き続き共に取り組む意図を共有した。
 
人的交流

14. 両首脳は、両国間における最近のハイレベルの相互訪問を歓迎し、こうしたハイレベルの相互訪問と対話を維持し、友好議員連盟を含む両国の国会議員間の交流を推進する意図を共有した。
 
15. 両首脳は、両国間の友好関係を更に強化するため、様々な分野で人的交流が推進されるべきであることを再確認した。両国間の観光交流の高いポテンシャルに鑑み、両首脳は、観光協力を強化するため、直行便の再開の積極的な追求によるものを含む、観光客の往来を相互に円滑にすることの重要性を確認した。
 
日本人戦没者の遺骨収集

16. 両首脳は平和への決意を新たにした。岸田総理は、日本人戦没者の遺骨収集及び戦没者慰霊碑の維持・管理のためのパラオ共和国の寛大な支援に対し、深い謝意を表明した。ウィップス大統領は、特に戦没者の遺骨収集の推進のため、引き続き日本に協力する意思を表明した。
 
国際社会における協力

17. 両首脳は、気候変動対策のために世界的な取組を強化する必要性を認識し、COP26の成果及び最新の関連する気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書を基に協力して取り組むことにコミットした。両首脳は、気候変動が太平洋島嶼国を含む世界にもたらす存亡に関わる脅威であることを強調した。
 
18. 両首脳は、開発途上国における持続可能な開発を達成するための透明で公正な開発金融の重要性を強調し、全ての関係者に対し、債務の持続性や透明性等の国際的なルール及びスタンダードを遵守するよう要請した。
 
19. 両首脳は、国連安保理決議に違反する、北朝鮮の進行中の核兵器及び弾道ミサイル開発を強く非難するとともに、国連安保理決議に従った、北朝鮮の全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄の実現のための取組の重要性を強調した。両首脳は、北朝鮮に対し、関連する国連安保理決議の下での義務を完全に遵守するよう求めるとともに、「瀬取り」を始めとする北朝鮮による制裁回避手段への対処を含め、これらの決議の完全な履行に対するコミットメントを再確認した。また、両首脳は、北朝鮮に対し、全ての人権侵害を終わらせ、拉致問題を即時に解決することを求めた。
 
20. 両首脳は、法の支配に基づく多国間主義への支持を再確認した。両首脳は、国際社会が直面している深刻な課題に対処するため、早期の安保理改革を含む国連全体の強化に向け、共に取り組む決意を新たにした。岸田総理は、改革された安保理における日本の常任理事国入りに対するパラオ共和国の一貫した支持への謝意を表明した。
 
21. 両首脳は、「核兵器のない世界」の実現へのコミットメントを再確認した。両首脳は、核兵器不拡散条約(NPT)が国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石であり、核軍縮の追求及び原子力の平和的利用のための不可欠な基礎であることを再確認した。両首脳は、40年にわたる世界の核兵器数の減少傾向は維持されなければならず、逆行させてはならないことを強調した。

ALPS処理水

22. PALM9首脳宣言においてPIF首脳により表明されたALPS処理水の海洋放出に関する諸点に留意し、岸田総理は、ALPS処理水の海洋放出は環境及び人体に実害がないことをしっかり確保した上で実施されることを改めて表明し、日本が国際原子力機関(IAEA)を含む国際社会と協力しつつ、国内外の安全基準に従い、透明性を持って取組を継続することを再確認した。ウィップス大統領は、PALM9以降の日本が行ってきた取組に留意するとともに、PALM9におけるコミットメントに基づき太平洋諸島フォーラム(PIF)の枠組み及び二国間関係を通じて緊密な対話を継続するとの日本の意向を歓迎した。
 
結語

23. ウィップス大統領は、日本の政府及び国民の温かい歓迎に謝意を表明した。
 
24. 両首脳は、未来を見据え、長年にわたる両国の友好・協力関係を更に発展させることへのコミットメントを改めて表明した。