令和3年度草の根・人間の安全保障無償資金協力「国営放送局ラジオ放送機材整備計画」署名式

令和4年3月16日
 



2022年3月16日、令和3年度草の根・人間の安全保障無償資金協力「国営放送局ラジオ放送機材整備計画」の署名式(供与額798万3,900円)が行われました。式典には、日本側から柄澤大使、パラオ側からグスタフ・アイタロー国務大臣、リンダ・ニラメケティ国務省公文書・メディア局長他が出席しました。
 
パラオ国務省の所管する国営放送局(愛称「エコ・パラダイス」)は、パラオにおける唯一の公的放送機関として、FMラジオ放送をパラオ全土に向けて24時間365日発信しています。同放送局は、平時においては政府の法令告示、大規模行事、コロナの感染情報、天気予報など、パラオ住民の生活上重要な情報を発信するとともに、災害時には避難、支援など生命維持に関わる情報を発信する役割を担っています。パラオにおいては、公的機関のウェブサイトやテレビ放送等が充実していないため、国営放送局のラジオ放送は、パラオ住民にとって必要不可欠なメディアとなっており、国民の大多数が日常的にラジオを聴いています。
 
国営放送局は現在、コロール州ミューンズ地区にあるスタジオと、同マラカル地区にある送信所の2つの施設を所有しています。しかし、長年の利用に伴い、両施設におけるアンテナを含む機材の故障や老朽化が進んでいる結果、2つの放送系統のうち1つ(FM-IPL系統)が故障して利用不可となっています。また、国営放送局は可搬式の放送装置を所有していないため、自然災害等によりスタジオや送信所の施設や機材が破壊された場合、外部に臨時放送局を設置して放送を継続する手段を持ち合わせていません。昨年4月にパラオに大きな被害をもたらした台風2号(スリゲ)を例として、近年パラオにおいて自然災害の頻度及び被害が顕著に増加していますが、これらの課題により、パラオ政府が被災時を中心としてパラオ住民に対し生命・生計の維持に必要不可欠な情報を安定的に発信ができないリスクが大きい状態が長年続いていました。
 
こうした背景を踏まえ、在パラオ日本国大使館は、供与額798万3,900円(73,925米ドル)の本件協力により、国営放送局に対し、FMアンテナを含む36種類の放送機材の更新及び可搬式の放送装置を整備する資金を供与することを決定しました。本件協力により、放送系統の二重化及びスタジオ外からの臨時放送が可能となり、被災時、平時ともにラジオ放送の安定性が大幅に向上します。また、二重化された放送系統や可搬式の放送機材を活用した多種多様な番組収録が可能となります。これらの効果を通して、パラオの自然災害への対応能力の向上と、パラオ国民の生命・生計の維持向上が期待されます。
 
署名式において、柄澤大使は「本件はパラオ国営放送局への記念すべき初の支援であり、防災分野におけるパラオに対する日本の集中的支援の新たな成果である。」と述べました。アイタロー国務大臣は、「全てのパラオ国民の生活に直結する支援であり、日本国民及び政府の寛大な支援に深く感謝する。」と述べました。
 
パラオでは、平成11年に初めて草の根・人間の安全保障無償資金協力が実施され、本件は92件目の案件署名となりました。