草の根・人間の安全保障無償資金協力「コロール州リサイクルセンタートラクター整備計画」署名式

令和3年3月10日
  

 2021年39日、在パラオ日本国大使館にて、令和2年度草の根・人間の安全保障無償資金協力による「コロール州リサイクルセンタートラクター整備計画」の署名式が執り行われました。式典には、大使館側から柄澤大使が、またパラオ側からコロール州のギボンズ知事他、多数の州政府関係者が出席しました。

 パラオでは、コロール州をはじめ、食材を含む全国の消費財を輸入に大きく頼っており、食料自給率の低さが長年の課題となっています。パラオにおいては、粘土質の土壌が広範囲に分布しており、野菜の栽培には適切な土壌改良が必要となる一方、耕地改良に必要な機器が十分配備されていないことから、約400ヘクタールの耕作可能面積の大部分で耕作が行われておらず、農業開発が進んでいません。その結果、住民は新鮮な野菜を手に入れることが難しく、毎日の食事が野菜不足になりがちです。ユニセフ発表の世界子供白書2019によると、同国の5歳から19歳以下の子供の64パーセントが肥満傾向にあり、 これはナウル(65%)に次ぐ世界第2位の高さとなっていることからも、食生活の改善が喫緊の課題と言えます。さらに、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響を受け、観光業が主要産業の同国において、新しい産業の開発や食料安全保障を強化する必要性が高まっています。

 コロール州廃棄物管理事務所(以下、「リサイクルセンター」と言う。)は、同国全土に先駆けてゴミ量の削減に尽力している州政府組織であり、飲料容器デポジットシステム、コンポストの製造・販売、廃プラスチックを生成油に還元する油化処理等の事業を展開しています。これに加え、リサイクルセンターでは、製造したコンポストと液体肥料を活用した農地開拓及び土壌改良の実施を計画していましたが、予算の制約等により、農地改良に必要となる機器を整備することが困難な状況が続いていました。このため、在パラオ日本国大使館は、供与額9989,100円の本件協力を通して、トラクター1台及びその付属品を整備することを決定しました。これにより、国内の農業振興及び食料自給率の向上のみならず、野菜の供給拡大を通して住民の食生活の見直しが図られ、肥満率の高さ等の栄養問題が改善されることが期待されます。

 署名式において、ギボンズ知事は、「本支援により供与されるトラクターは、コロール州のみならずパラオ全土の農業開発に活用される。」と述べ、日本国民と日本政府への感謝の意を表しました。また、柄澤大使は、「本件は2020年から開始された新たな日・パラオ農業協力の成果の一つに位置づけられるものであり、今年はさらに多くのプロジェクトの立ち上げを予定している。生鮮野菜の供給拡大を通して、人々の健康と食料安全保障の改善が図られることを願っている。」と述べました。

 パラオでは、平成11年に初めて草の根・人間の安全保障無償資金協力が実施され、本件は86件目の案件署名となりました。