南国パラオでゴミを集め続けた1年5か月

平成29年9月29日
                   27-4環境教育隊員
藤井堯典
 
 
この国にはロックアイランドをはじめ美しい自然がたくさんあり、毎日多くの観光客が訪れている。しかしその自然環境を守るための活動は十分とは言えず、特に廃棄物の問題は深刻化している。
 
私がJICAボランティア(環境教育隊員)としてパラオに派遣されてきたのは2016年3月。そして派遣先であるペリリュー島に上陸したのは4月9日。天皇皇后両陛下がお越しになられてからちょうど一年後の日であった。上陸後そのまま記念式典に参加したのだが、そこですべてのゴミが分別されることなく捨てられている光景を目の当たりにし、その瞬間私の活動の目標が決まった。「ゴミの分別回収システムの導入」である。
パラオではゴミの分別が義務化されておらず、ほとんどすべてのゴミは一緒に捨てられている。唯一空き缶やペットボトルのような飲料容器はデポジット制があり、コロール州にあるリサイクルセンターに持ち込むと買い取ってもらえる。しかしペリリュー島はコロールから遠く離れた離島であり、個人で持っていくことは非常に大変で、結果多くの飲料容器が回収されることなく捨てられていた。
 
そこでまずはこの飲料容器のリサイクルを推進するため、2016年8月からペリリュー州政府が仲介として半額で島民から買取り、その後州の定期船でコロールまで運搬するプロジェクトを開始した。果たしてこのプロジェクトがうまくいくか不安だったが、島民説明会やポスターの影響もあってか、初月から1万個以上の回収に成功した。その後も口コミで島民の間に広がり、2017年7月までの1年間で総量19万個、月平均1万5千個を回収することができた。また州政府としての利益も5000ドル近く出ており、島のゴミの量を減らし、かつ州政府の収入も増やすことができる一石二鳥のプロジェクトである。今後はこのプロジェクトがペリリュー島以外の州でも導入されることが期待されている。
 
そして、2016年10月、ついにゴミの分別化に向けたプロジェクトに着手した。まずはどのようなゴミを分別回収するか決定するために、リサイクルセンターとの打ち合わせを行い、現在パラオでリサイクル可能な3種類に絞って回収することにした。プラスチック、金属、ガラスである。プラスチックは、一部は海外に輸出され、その他は油化装置により油の原料としてリサイクルされている。金属も海外に輸出される。ガラスは「Belau Eco Glass」というガラス工芸の原料としてリサイクルされている。未だ多くの住民が知らないが、実際これらのゴミはこの国でリサイクルできるのである。またこれらのゴミは土に還るまでにかかる時間が非常に長く、これらをリサイクルすることは自然環境保全の観点からも非常に重要なことである。
その後、飲料容器の買取サービスで得た利益、そしてJICAからの支援をもとに島内にゴミの分別回収場である「Recycle station」を18か所設置し、2017年3月に回収を始めた。それぞれのステーションには色分けされた3つのドラム缶が置かれ、それぞれプラスチック用、金属用、ガラス用として利用されている。現在2~3週間に1回の回収で、ゴミ袋15個程度集まっている。具体的には、洗剤のボトルや1.5Lのペットボトル、ガス缶(Butane)、缶詰、インスタントコーヒーのガラス容器などが多く回収されている。まだまだ島民全員がこのプロジェクトに協力してくれているとは言えないが、それでもすでに一定数の島民がゴミの分別を「習慣化」してくれていることは非常に嬉しいことで、私が去った後も島全体でゴミの減量化に取り組んでもらえたら、私のパラオで活動したこの1年5か月は大成功と言ってもよいだろう。そしてこの活動も、ペリリューだけでなく他の州にも広がっていってくれたらこの上ない喜びである。
 
一緒に活動を支えてくれたペリリュー州政府の職員、リサイクルセンターの職員、そして私の日々の生活を支えてくれたペリリュー島民の皆さん、本当にお世話になりました。今度は嫁を連れて島に遊びに来ます(現時点では彼女すらいませんが)。
Mechikung(さようなら)!!