パラオ情勢 2016年3月号

平成28年7月27日
※この月報は、パラオ国内の新聞やテレビ報道をもとに、在パラオ日本国大使館が作成しています。


◆政治
1.パラオ内政
・上院とシムス臨時特別検察官(ISP)の対立が継続
シムスISPは,1月にベルズ副大統領兼司法大臣に対する刑事告訴を取り下げたが,同告訴の経緯に不満をもつ上院との緊張関係が続いている。
1日,上院はシムスISPに対して,ベルズ副大統領の刑事告訴に関する尋問を実施し,一旦は起訴しながらも訴訟を取り下げた理由に焦点を当てて質問を行ったが,同ISPは,ISPの独立性,守秘義務,及び将来の訴訟への影響といった観点から詳細な説明を拒否した。満足する答えを得られなかった上院は,3日,シムスISPによる一連の行動は,ISPとしての責任や倫理観に欠けるものであったとして,同ISPの即時辞職を求める決議を採択した。シムスISPは,辞職の求めに応じていない。
 
・政府機関事務所が空き巣被害
5日夜から6日朝にかけて,何者かが税務・歳入室及び労働課の事務所に不法侵入し,金目の物を盗むという事件が発生した。警察筋によれば,先月だけでも,ホテルや個人宅,職場等で17件の不法侵入被害が報告されている。
 
・最高裁が第12回ペリリュー州議会を無効と判断
8日,最高裁判所は,1月1日に実施された第12回ペリリュー州議会による就任の宣誓は無効とし,遡及的に,同月以降に行われた議会活動すべてについても無効との判決を下した。
第12回同州議会は政治的な勢力争いのため内部分裂し,結果として,1月の就任式は,ペリリュー州にて宣誓実施のペリリュー・グループ6名と,コロール州にて宣誓実施のコロール・グループ8名に分かれての同日開催となった。争いの発端となったのは,後にコロールで宣誓することとなる8名が,第12回議会で実権を握るため政務三役を掌握しようとし,残りの6名が反発したためとされている。
ペリリュー・グループは,就任式が有効となるためには,1月の第2火曜日にペリリュー州で行う必要があること,かつ過半数による出席が必要であることを理由に,コロール・グループによる宣誓は無効と主張して提訴した。同州議会の定数は15名であり,うち5名は各地区代表の酋長が非選出議員として,自動的に州議会メンバーとなる資格を有する(1月1日時点で,酋長の肩書が1つ空席となっていたため,就任式に参加した州議会議員は14名)。当時,コロール・グループに所属していた酋長4名のうち1名は,酋長の肩書を係争中であったため,同人が州議会議員の資格を有しているかどうかが焦点となった。
最高裁は,係争中の酋長分の州議会議席については空席とし,結果としてコロール・グループで有効な議員資格を有していた者は7名となることから,過半数定数に満たないとした。同時に,ペリリュー・グループも過半数定数に届いておらず,第12回議会は無効との判決が下されることになった。
 
・コイチ・ウォン元天然資源大臣の逝去
8日,コイチ・ウォン元天然資源大臣が,台湾の病院にて逝去した。米信託統治時代から,主に公共事業分野で活躍し,パラオ独立後は,初代天然資源大臣を務めた。その後,サリー大統領によって国家開発担当に任命され,2001年に引退するまで,4代の大統領の下で同職を務めている。同氏は,ベラウ国立病院や上下水道,発電所の整備など,パラオにおけるインフラ整備に尽力し,同国の社会経済の発展に大きく貢献した。
31日,コイチ・ウォン元天然資源大臣の国葬が執り行われ,レメンゲサウ大統領をはじめとするパラオ政府要人が参列し,故人を偲んだ。
 
・青少年フォーラムの開催
9日から11日にかけて,ガラマヨン文化センターにおいて,学生を対象とする青少年フォーラムが開催された。2016年を青少年の年に指定したレメンゲサウ大統領も本フォーラムに出席し,基調講演を行った。若年層の声を国の青少年政策に反映させることを目的に,テーマごとにワーキンググループに分かれて議論が行われたほか,様々な団体による教育や保健など,若者向けサービスの紹介がなされた。なお,パラオにおいては,3月15日は青少年の日として祝日となっている。
 
・パラオ家庭の健康と安全に関する報告の発表
保健省の家族健康プログラムのため,国連人口基金の協力の下,パラオの1,177世帯(調査参加率97%)を対象に行った調査によると,23%の女性がその生涯においてパートナーからの暴力を経験していることが明らかとなった。パートナーによる暴力は飲酒や薬物摂取が関与するとその割合がより高まる傾向にあり,12%の女性が15歳になる前に暴力を受けていることも判明した。また、67%の女性がパートナーからの暴力に対して何らの支援を求めていないことも確認された。パラオでは,トリビオン政権時代の2012年に女性や子供の保護を目的とした家族保護法(Family Protection Act)が制定され,危険を感じさせる人物を家庭から24時間隔離させる権限を法執行者に与えるなどして家族の保護を保証しているが,昨年は30件程度だった家庭内暴力の報告が,今年は1-2月の間だけで20件確認されるなど,法制定だけでは問題の根本的解決とはならないことが示されている。ニルマン保健大臣も,「パラオ社会における女性に対する暴力は現実であり,その背景は複雑だ。問題の解決には,政治家や行政,伝統的リーダーや地域など社会全ての支援が必要である」と述べている。
 
・レメンゲサウ大統領による特別検察官(SP)の指名
16日,レメンゲサウ大統領は,スティーヴン・キレリア氏をSPの職に指名した。同氏は,米国ボストンのサフォーク郡検事事務所にて地方検事補佐として数年務めた後,2015年12月より,パラオにて臨時特別検察官(ISP)補佐として勤務している。同氏の指名は,上院の3分の2以上によって承認される必要がある。
今回の指名は,ベルズ副大統領兼司法大臣に対する刑事告訴問題を発端に,シムスISPへの国内批判が高まり,2010年以来空席となっているSPの早期指名を求める声が多くなっていたことを受けたもの。SPが就任すれば,臨時ポストであるISPは任務終了となり,本人の辞職または司法長官による解任を待つことなく,シムス現ISPの続投はなくなる。
 
・薬物関連犯罪摘発の増加
ベラウ薬物取締タスクフォースの発表によれば,昨年10月に薬物取締強化のため同組織が結成されて以来,3月18日までに,薬物関連犯罪による刑事訴追は22件に上っている。2015年の起訴数は14件であったが,2016年は,1月から3月18日までの2か月半で,すでに17件に達している。
他方で,アグオン司法省公安局長によれば,パラオ国内で,不法侵入及び窃盗が急増している。これは,違法薬物の購入資金に充てるため,金目の物を盗むことが目的とされている。今年2月には11件,3月1日から18日までの期間には24件の不法侵入が,警察に通報されている。
 
・ピエラントッツィ大統領候補による選挙公約の発表
20日,次期大統領選に出馬予定のピエラントッツィ上院議員が,選挙キャンペーン用スローガンとともに,10の選挙公約を発表した。“Palau for Palauans – No One Left Behind(パラオ人のためのパラオ-誰も取り残されない)”というスローガンの下,すべてのパラオ人が恩恵を受けることのできる包摂的な経済成長のため,教育,保健,環境,雇用,社会福祉,インフラ整備,薬物取締分野での政策充実が掲げられている。
 
・パラオメディア諮問会議の結成
第4回メディア・サミット開催の機会に,当地紙ティア・ベラウの経営者であるモーゼス・ウルドン氏が中心となって,パラオメディア諮問会議(Palau Media Council)が結成された。同会議は,パラオにおける表現・報道の自由の促進や,メディア産業の発展を目的としている。メディア・サミットの期間中に,PINAによってメンバー団体として認可された。
 
・第9回パラオ議会の法案成立数は57本
2012年に発足して以降,第9回パラオ議会は,現在までに57本の法案を成立させている。うち,25本は上院,33本は下院による提出によるもの。具体的には,最低賃金法,海底ケーブル関連法,国家海洋保護区法,臨時特別検察官法などが含まれる。
 
2.パラオ外政
・レメンゲサウ大統領による第6回ミクロネシア非営利組織会合出席
レメンゲサウ大統領は,3日から4日にかけてグアムを訪問し,同地域NGOであるPayu-Ta主催の第6回ミクロネシア非営利組織会合において,基調講演を行った。Payu-Taは,主にグアムの非営利組織を支援するためのネットワーク型NGOで,現在27団体が加盟している。
 
・ヤップ・デーへのパラオ使節団派遣
1日,ミクロネシア連邦ヤップ州において開催されたヤップ・デー関連行事に参加するため,50人規模のパラオ政府要人使節団が派遣された。同使節団には,中央政府代表のオビアン公共基盤・産業・商業大臣のほか,コロール州,マルキョク州,ニワール州などの州政府関係者も多く含まれている。
 
・持続可能な開発目標14に関する10×20イニシアティブ会議へのパラオ出席
7日から9日にかけて,ローマにおいて,イタリア政府,海洋サンクチュアリー連合(Ocean Sanctuary Alliance: OSA)及び国連環境計画(UNEP)の共催で,持続可能な開発目標14(海洋及び海洋資源)に関する10×20イニシアティブ会議が開催され,保護区ネットワーク法(PAN:Protected Area Network)や国家海洋保護区法を成立させ海洋保護区の拡大に努めるパラオが,先進的事例として取り上げられた4カ国のうちの1カ国となった。パラオを代表して同会合に参加したゴルブー(Dr. Yimnang Golbuu)パラオ国際サンゴ礁センターCEOとオットー(Dr. Caleb Otto)国連大使は共同でプレゼンテーションを行い,海洋保護区設立に向けたパラオの経験について発表した。10×20イニシアティブは,イタリア政府とOSAにより,持続可能な開発目標14・ターゲット5(2020年までに,沿岸部及び海域のうち10%を保全する)の達成推進を目指して,2015年10月に設立された。
 
・サダン財務大臣,モロッコ・太平洋フォーラムに参加
17日から22日にモロッコのダクラ(Dakhla)で開催されたモロッコ・太平洋フォーラム(Morocco Pacific Forum)に,大統領の代理として参加したサダン財務大臣は声明を発表し,太平洋島嶼国をモロッコ王国に引き合わせてくれたクラン・モンタナ・フォーラム(Crans Montana Forum)に感謝すると共に,モロッコ政府より提案のあった奨学金制度や国家海洋保護区設立への支持に謝意を表した。クラン・モンタナ・フォーラムは1986年から活動するスイスの国際NGOで,慈悲深く公正な世界の構築を活動の目的としている。
 
・パラオ兼轄豪州大使による信任状奉呈
10日,パラオ兼轄のフレイザー在ミクロネシア連邦豪州大使が,レメンゲサウ大統領に信任状を奉呈した。同大統領は,緑の気候基金(GCF)への期待を述べたほか,教育や保健・スポーツ,観光,IT,海上保安など,豪州による対パラオ協力に謝意を表明した。
 
・第4回メディア・サミットの開催
21日から25日にかけて,ガラマヨン文化センターにおいて,大洋州報道協会(Pacific Islands News Association: PINA)主催の第4回メディア・サミットが開催され,太平洋島嶼国から報道関係者が一堂に会し,活発な議論を行った。期間中,PINAの副会長として,当地紙ティア・ベラウ経営者のモーゼス・ウルドン氏が選出された。
 
・ベック元国連大使の国葬
18日,コロールに所在する旧国会議事堂にて,ベック元国連大使の国葬が執り行われ,レメンゲサウ大統領をはじめとするパラオ政府要人が参列し,故人を偲んだ。同人は,パラオ人妻の出身部族の墓地に埋葬された。
 
・レメンゲサウ大統領がCol.Ralph W. Hauenstein Fellowship Awardを受賞
レメンゲサウ大統領は,母校のグランドバレー州立大学より,Col. Ralph W. Hauenstein Fellowship Awardを授与された。同賞は,リーダーシップ及び公益奉仕によって,国や世界に大きな影響を与えた卓越した個人に贈られる。レメンゲサウ大統領は,1979年に,同大学にて刑事司法学士を取得しており,後に公共サービス分野で名誉博士号を授与されている。
 
◆経済
・バイオセキュリティー法の成立
レメンゲサウ大統領は,2月26日,進入生物種の国内流入防止を目的としたバイオセキュリティー法に署名し同法を成立させた。同法により,天然資源・環境・観光省にバイオセキュリティーに関する規制作成などの権限が付与される。また,初犯者には1万ドルの罰金乃至は最大6ヶ月の禁固刑,その後,三度目以降の違反者には5万ドルの罰金乃至は最大2年の禁固刑が課されることとなる。
 
・排他的経済水域における監視・管理・調査に関する5カ年計画の発表
パラオ政府は,国家海洋保護区法の一環として,違法漁業を駆逐するための計画を発表する。この計画は,違法・無報告・無規制漁業の阻止,捜査,禁止,起訴の促進,海洋救助,油漏れ,災害対策,汚染捜査,気象予報や気候変動対策などの促進に言及している。また,海域での違法漁業対策技術や南西諸島への監視施設の建設などにも触れている。同計画は,2015年4月にピュー慈善財団(Pew Charitable Trusts)とスクリプス海洋研究所(Scripps Institution of Oceanography)提携により開催されたワークショップの成果である。
 
・成功するパラオのリサイクルプログラム,払い戻し率は89%
公共事業・産業・商業省が発表した「飲料器リサイクル」に関する報告書によると,過去5年間で,パラオは償還可能飲料器のデポジットとして総額6,999,492米ドルを受領し,3,133,378.50ドルが飲料器回収者に支払われている。更に,同報告書は,2011年から2015年の間にパラオに輸入された償還可能容器69,814,827個のうち,89.76%に当たる62,667,570が回収センターに償還されたとしている。レメンゲサウ大統領は,同プログラムは太平洋地域で最先端の固形廃棄物処理システムであると述べ,ミクロネシア首長サミット後に同プログラムを見学したハイネ・マーシャル諸島大統領も,マーシャルも見習うべき事例として感銘を受けていた。
 
・公務員年金制度は年間約3.5百万米ドルの損失に
エティベック(Mr. Presley Etibek)公務員年金行政官が上院に提出した書簡によると,公務員年金制度は依然として深刻な財政不足にあり毎年純損失を計上している。同制度では,加入者の負担金から6.1百万米ドルの財源を確保しているものの,給付金,払戻金,管理諸費などに9.7百万米ドルを支出しているため,年間約3.5百万ドルの損失が発生している。2014年会計年度の報告書によると,同制度は総額で113百万ドルの負債を抱えているとされる。昨年10月に法制化されたパラオ国家海洋保護区法には,100ドルの環境影響税から25ドル分を年金制度による損失の補填に用いると規定されており,年間14万人の観光客が来訪すれば,国家海洋保護区法から年金制度に年間で3.5百万米ドルが拠出される計算となる。なお,パラオ公務員年金制度は,被雇用者が自身の給与の6%を,雇用者が同額を負担して公務員の定年に備える制度で,国家公務員及び準自治機関職員の加入が法律により定められている。
 
・パラオ国家開発銀行が新頭取を歓迎
パラオ国家開発銀行評議員長のレエエセンゲル(Mr. Marino Rechesengel)氏は,ハーベイ(Ms. Harvey)氏の加入は銀行にとって大きな意味を持つとして,新頭取を歓迎した。新頭取となるハーベイ氏は30年以上の金融業界での実務経験を有し,サモアやニュージーランドでの業務経験に加え,パラオにおいても,2005年から2009年にかけて,パラオ国家開発銀行の貸付政策に関する開発・実施業務に従事した経験を持つ。
 
・パラオ,海事輸送政策の開発へ
沿岸国,港湾国,旗国,そして,国際海事機関(IMO)加盟国として海事運輸政策は重要であるため,公共基盤・産業・商業省下の海事輸送課は,南太平洋共同体(SPC:South Pacific Community)の支援を受け,同政策の策定に取り組んでいる。モーゼス(Mr. Hayes Moses)課長によると,国内・海外向けの船積みや港湾の保安を含むより効果的な海事輸送に関する一般指針の作成が目指されている。SPC経済局運輸プログラムの政策・法律アドバイザーであるトムタバラ(Mr. Yoli Tom’tavala)氏によれば,IMOはSPCによる同共同体加盟国への海事輸送政策立案支援を支持しており,パラオが域内では最初の支援要請国となった。IMOは,2017年11月にパラオの政策策定状況を査察予定であり,それまでにIMOの基準を満たす政策策定が求められる。
 
・海底ケーブル事業,アジア開発銀行からの貸付金契約に署名
7日,サダン財務大臣とヤオ(Mr. Xianbin Yao)アジア開発銀行太平洋局長は,マニラのアジア開発銀行本部にて,海底ケーブル敷設のための貸付金となる北部太平洋地域接続投資計画(North Pacific Regional Connectivity Investment Project)に署名した。アジア開発銀行は,最大25百万米ドルの貸付を承認している。貸付金の払い込みは,16.5百万米ドル分は変動金利(ライボー(London Interbank Offered Rate)+0.6%、及び年0.15%の未貸付残高手数料),8.5百万米ドル分は固定金利(年利2%で,その他の手数料なし)にて実施される。両払い込みは5年間の支払い猶予を含めて25年間で,最初の支払いは2021年6月1日までに行われる必要がある。
 
・2016年10月より,観光客へのビザ代及び環境影響税の課金へ
パラオ国家海洋保護区法に基づき,2016年10月1日より,パラオに入国する非パラオ人観光客には,新規に課金される50ドルのビザ代に加え,現在,50ドル徴収されている環境税(Green Fee)が環境影響税(Environmental Impact Fee)と改名の上、徴収額も100ドルに増加されることから、150ドルの負担が求められることとなる。タルコン(Mr. John Tarkong)財務省税関課長によると,政府は,オンラインビザ申請システムによる料金の徴収を想定しているが、代替案として,航空券に費用を含める案や,入国時のビザ代徴収と出国時の環境影響税徴収案も検討されている。現在,5大臣乃至はその代理で構成されるタスクフォースが協議を進めているが,パラオ国家海洋保護区法には,タスクフォースの結論が出なければ,2016年10月1日からは,具体案が実現するまで,到着時に観光客からビザ代と環境影響税を徴収すると定められている。
 
・パラオの銀行部門は成長へ
2015年パラオ銀行部門年次報告によると,過去2年間,顧客による預金が劇的に拡大した結果,総預金高は240百万米ドルとなり,前年比で28%増加した。拡大の背景には観光業の成長がある。また,全体の貸付金高は2.5%減少し,法人向けローンに至っては15%減少している一方,消費者ローンについては5.9%増加している。消費者ローンの増加についてデエロン(Mr. Semdiu Decherong)金融機関委員会会長は,「過去14年間に渡り消費者ローンの利率が継続して低下したこと,銀行による貸付条件の緩和,最低賃金の上昇が原因に挙げられる」と分析している。報告書によれば,2015年の間に不良債権は36%低下し,資産が増加しているにも拘わらず各銀行がコストダウンを図っていることもあり銀行部門の収益は1.38%台で安定している。
 
・トリビオン上院議員,国有企業に関する大統領令の撤回を要求
23日,エネルギー・公共事業・公共基盤委員会委員長のトリビオン上院議員はレメンゲサウ大統領に書簡を発出し,国有企業の統治に関する国家政策の設立を目指す大統領令第373号の撤回を求めた。書簡の中で同議員は,公共企業の設立は法律で定められており大統領令によって改訂できるものではなく,各公共企業の運営や手続きについては評議員長にその権限が与えられているのであり,大統領や財務大臣にその権限はないと説明している。同議員によれば,大統領令は全ての公共企業の財務運営に関する監督権を財務大臣に与えることを目指しているが、かかる試みは権力分立の崩壊につながると指摘している。
 
・レメンゲサウ大統領,干ばつ対策に2百万米ドルを支出
レメンゲサウ大統領は,議会で承認された大統領令に伴う非常事態時の干ばつ対策として,2百万米ドルの緊急対策資金を拠出した。これにより,新規や未開発の地下水汲み上げ候補地での試掘や,その後に必要となるポンプやドリルなどの必要機材の購入が可能となる。
 
・アジア開発銀行,パラオ経済を3%の成長と予測
アジア開発銀行の最新経済予測によると,域内の各島嶼国の経済が低下する中,パラオ経済は高成長を経験することが期待されている。同予測では,観光業の抑制のため,今年の経済成長率は3%程度に下降するが,2017年のGDPは7%に回復すると見込んでいる。アジア開発銀行は,また,ミクロネシア連邦やマーシャル諸島共和国と比較して,パラオは観光業を通じて堅調な経済成長を持続させているとする一方,海外からの投資,税制,小規模産業育成,環境管理等に関する政策を策定し,急速に成長する観光産業により適切に対応する必要があると分析している。
 
・2月の訪問客数
2016年2月のパラオ訪問客の総数は14,134人であり,昨年同期に比べ20.54%減少した。内,日本人は3,368人(前年同期比20.24%増),台湾人は1,264人(同28.30%減),韓国人は1,038人(同25.36%増)で,中国本土(含香港)からの訪問客は6,808人(同37.85%減)となり、月間訪問者総数の約5割を堅持しているものの、昨年11月以来、対前年比訪問者数は4ヶ月連続で減少傾向にある。
 
・31百万米ドルの空港拡張事業へ
官民連携事業の覚書を交わした双日株式会社,日本空港ビルディング株式会社,及びパラオ政府により行われている調査の結果に基づき,国際空港の旅客ターミナル,駐車場設備,積み荷施設の拡張工事内容が決定される。オビアン公共基盤・産業・商業大臣によれば,最終報告書のドラフトが今月末に発表される予定で,事業額は少なくとも31百万米ドルとなる見込み。2月18日に開催された事前報告では,パラオに於ける観光産業の成長を見越した空港施設の拡張の必要性が報告された。両社は,航空会社との人脈を用いて,更なる日本人観光客の来訪を促すと共に,空港内のレストラン,土産物店,VIPラウンジなどからの増収も支援すると発表している。
 
・エリメル(Ngerimel)ダムが空に
12日,パラオ公共事業公社は,干ばつに伴う水不足の結果,エリメルダムの水が枯渇すると共に,エリキール(Ngerikiil)川の水位も大幅に低下しているため,コロール・アイライ地区に対し,午前5時から10時まで,及び午後5時から10時まで水道水の使用を可能とする14時間の計画断水を実施する旨発表した。エルニーニョによる干ばつに見舞われているパラオでは,ガラロン,ガラルド,アイメリークの各州や離島州のペリリューにおいても計画断水が行われている。
 
・干ばつに伴う非常事態宣言の発令
22日,レメンゲサウ大統領は,継続する深刻な干ばつに鑑み、大統領令389号に基づく非常事態宣言を発令した。パラオ議会も非常事態宣言の発令を承認したため,大統領は対策に必要な資金や淡水化装置や給水車などの手当することが可能となる。非常事態は10日間有効で,その延長には議会の承認が必要となる。
 
・草の根無償によるガラルド小学校へのスクールバス引き渡し式
3日,冨田参事官が出席して,ガラルド小学校にて,草の根・人間の安全保障無償資金協力による88,894米ドル相当の日産マイクロバス(新車)2台の引き渡し式が行われた。本案件は,15年以上使用していたスクールバスの故障により朝の授業に生徒が間に合わないなどの不具合を改善し,ガラルド小学校の学校運営の促進に寄与することを目的とした案件である。
 
・日本地雷処理を支援する会(JMAS:Japan Mine Action Service)の新規事業調印へ
3日,田尻大使は,JMASパラオ事務所寺田代表との間に,821,710米ドルを上限とする,平成27年度日本NGO連携無償資金協力の贈与契約を締結した。過去3年間,コロール海域に於ける不発弾処理に従事し,海底に残存していた2個の爆雷除去作業を含む成果を上げた同団体は,作業海域を拡大して新規事業を実施することとなる。
 
・「送配電網の改善と維持管理のための開発プロジェクト」承認へ
パラオ公共事業公社がJICAを通じて提出していた送配電網プロジェクトが,2月10日付けにて,日本の2016年会計年度案件として承認された。この技術協力の目的は,80年代に設置され老朽化の進む送配電網の近代化・能率化を図る同公社を支援するものであり,送配電網の改善により,停電やシステム不備の削減,電圧の安定化や電流の急上昇などの妨害要因の最小化が期待される。また,本プロジェクトでは,バベルダオブ島全ての電柱・電線も点検されるため,送配電の遅滞なく再生可能エネルギーへの転換を進めることも可能となる。パラオ公共事業公社によると,このプロジェクトへの申請には,バベルダオブにある17カ所の水源とマルキョクの下水網改善のための調査も含まれている。
 
・草の根無償によるミゼンティ高校理科実験室のための贈与契約署名
16日,田尻大使は,在パラオ日本国大使館にて、マッコーリフ(Rev. Richard McAuliff)校長との間に,草の根・人間の安全保障無償資金協力による理科実験室建設のため,74,770米ドルの贈与契約への署名を行った。本案件は,理科教育の充実を目指しながらも,シロアリによる施設の侵食や器具の不足のために教育活動に制限があるミゼンティ高校に,実験室や実験器具を供与することで,より充実した理科教育の提供に寄与することを目的とした案件となっている。
 
・保健省、台湾の彰濱秀傳(Chang Bing Show Chwan)記念病院と緊急搬送協力の覚書に署名
4日,ニルマン(Hon. Gregorio Ngirmang)保健大臣は,台湾において,彰濱秀傳記念病院を経営する傳記ヘルスケアシステムの葉(Dr. Yeh Yung-Hsiang)副会長との間で,緊急搬送に関する覚書に署名した。彰濱秀傳記念病院はこれまで2年に渡りパラオに医療支援を行っており,同病院は郭(Ms. Finska Kuo)氏をパラオに常駐させ,地域レベルでの血圧,血糖値,コレステロールの測定,衝撃の少ない運動による非感染症疾患対策や健康的な食生活の啓発活動などを行っている。
 
・ペリリュー州一行が台湾農業試験場を訪問
25日,シュムル知事率いる60名のペリリューからの一団が,台湾大使館の資金援助を受け,マラカルにある水産試験場やアイメリークにある農業試験場を訪れ、専門家と質疑応答などを行った。同訪問の目的についてシュムル知事は,「先進的農業法と技術を見学することで伝統的農業から脱却し生産性を高めることにある」と説明している。
 
・豪州の新巡視艇,航空監視機能も
信任状奉呈のためパラオを訪れていたフレイザー大使(パラオ共和国・ミクロネシア連邦・マーシャル諸島共和国駐箚)は,太平洋巡視艇プログラムは2018年に開始され,巡視艇レメリーク号と交換で建造される新船は同規模かやや大きめのものとなり,乗組員の訓練も継続実施される旨発表した。パラオ排他的経済水域における監視・管理・調査に関する5カ年計画によると,新船には確実で効果的な通信を可能とする衛星通信システムが搭載される予定となっている。
 
◆その他
・東海大学海洋練習船が寄港
東海大学の海洋調査研修船望星丸がパラオに寄港した。これは東海大学による海外研修航海プログラムによるもので,111名の学生が研修に参加した。教養学部国際学科の吉川教授によると,学生はこの研修により,異文化理解,環境保護,国際協力の重要性などを実地で学ぶことが可能となる。